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Aに第一印象なんてものはなかった。
ただ死にそうな女。それだけだった。
艶のある黒髪が風に靡いていてそれが綺麗で自然と声をかけていた。
Aは色が分からないと言った。
別にそれを嘆くわけでもなく、ただ単に事実を述べるように淡々と。
煙草を持った俺を恐れるわけでもなく普通に話した。
それから、俺たちは廊下ですれ違ったらなんとなく会釈して
屋上で鉢合わせたらなんとなく話して
なんとなく、なんとなくでいつの間にか仲良くなっていた。
Aといるのは居心地が良くて俺たちは多分気が合うんだろうなと思った。
「待った?」
「別に〜」
めいちゃんにはあの日のことを言っておかなければいけないと思い、呼び出した。
最近はよく昔のことを思い出す。
「俺、Aに好きだって言った」
アイスコーヒーを飲むめいちゃんに向かって言った第一声。
目を見開いてなんのことか分かってなさそうな表情。
「…え、どういうこと」
「Aに告白した」
グラスの水滴がツーと流れて机に水溜まりができる。
「……付き合ったの?」
「まだ、」
「まだってなに?俺が好きだって知ってたよね」
「うん、でも俺だって8年前から好きだった」
「そんなこと言われたって」
めいちゃんの言う通り、年数なんて関係ない。
8年って言ってもその間に彼女がいたこともあった。
だけど長続きしなかったのはきっと頭のどこかにAがいたから。
もちろんめいちゃんに申し訳ないという気持ちもある、
でも、俺だって
Aが好きだから
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みみん(プロフ) - みんな好きです! (2021年10月3日 16時) (レス) @page3 id: be9bb8144f (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!こちらも楽しませていただきます!!! (2021年10月3日 7時) (レス) id: 3c19ec381c (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - ゆな (最強)@さぶ垢さん» わー!ありがとうございます!頑張ります🤍 (2021年10月2日 23時) (レス) id: 9693ea101e (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - まねきねこさん» ありがとうございます!本当に嬉しいです、頑張ります🤍 (2021年10月2日 23時) (レス) id: 9693ea101e (このIDを非表示/違反報告)
ゆな (最強)@さぶ垢 - 続編おめでとうございますー!!!🎉🎉🎉これからも影から応援させていただきます✨無理せず更新頑張ってください🙌 (2021年10月2日 21時) (レス) id: 90fb24ada6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らん | 作成日時:2021年10月2日 16時