きゅんとしたら負け。

無口.2 ページ7

「いい話だったね〜感動しちゃった〜」
「夏祭りのシーン良かった」
「ね！すっごいドキドキした！」


映画は、最近人気の恋愛映画。
主演の俳優さんたちもすごく豪華だから、ずっと前から見たかったものだ。

キスシーンとかは、映画よりも大樹くんの顔を見て勝手にドキドキしちゃったけど。


「泣いてた最後」
「うそ、バレた？」
「ちょっと目、赤いし」


目線があって、二人で赤くなって。

それが何だかおかしくて、ふふっと笑ってしまった。

すると、大樹くんが急に私から離れた

一歩下がって、深呼吸をする彼。
これはきっと、夢にまで見た＿＿＿＿＿＿





「A」





もしかしたら、下の名前で呼ばれるのは初めてなんじゃないかと思った。

改めて名前を呼ばれると、私までかしこまってしまい、はいっと返事。

大樹くん、かっこいい

やっぱり、大好きだ。





「……ちょっと、休んでく？」






「え？」




彼の口から出た言葉は、期待していた言葉とはかけ離れていて。


みるみると私から力が抜けて、へなへな膝から崩れ落ちる。

馬鹿みたい、期待なんてするんじゃなかった。
感動とは別の涙が溢れる。

馬鹿、馬鹿。

私は、大樹くんにとってバイト仲間でしかないんだ。


わかりたいけど、理解できない。

笑ってごまかそうとした時。


目尻にむにっとした感触。

顔を上げれば、そこには顔が赤い大樹くん




「まさか泣いてくれるとは思わなかった」


「ごめん、勇気出なかった」


「順番違うかも知れないけど、俺と付き合って下さい」






ずっと好きだったんだ。断れるはずがないよ。



それは、白馬に乗った王子様が、転んだ私に手を差しのべるみたいに。







◇
無口

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