大切な人の席【江戸川乱歩】

2席 ページ18

乱歩side

「もう戻りなくない」

「探偵社に？それとも昔に？」

「…どっちも」

未だ昔のことが根付いているようで、いつもより弱い声で話している

それにつられてこっちまで弱い声になってしまう

うーん、どうしよっかな？

このまま連れてったら皆から心配されて、Aの気分がまた崩れるかも

…なら

「逃げるか！今日一日！」

「は？けど、仕事…」

「そんなのみんなに任せればいいの！もう決定したこと！駄菓子買ってまた戻ってきて食べて、猫と遊んで帰って寝る！」

Aが、何云っているんだって顔をしているがそんなの気にしない！

今は駄菓子を買いに行く！

「嗚呼、もう負けだよ。みんなには悪いけど仕事ほったらかすかぁ」

眉を下げながら笑う姿は、いつもの幸せそうなAとは少し離れてるけど

笑顔が見れているのなら大丈夫だろう

そもそも作り笑顔してたら直ぐに気付くし

それにAは、僕に嘘は通用しないって判ってる

Aの手を引いて、小さい頃のようにルンルンで駄菓子屋をめざした

あまり人が居ないから道も歩きやすい

「明日は社長に怒られるのかぁ」

「一人で怒られるより二人で怒られた方が良いさ」

「なら明日休んで、乱歩だけ怒られるようにしよう」

「そんなことしたら社長と一緒にAのこと迎えに行くから」

「ひえっ」

駄菓子屋に行っているこんな話でも話しているだけで幸せと無意識に思っていた

ちゃんとAがはぐれないように手を繋いでおかないと

(話と関係ないものです)→←1席

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