念肆の巻 ページ31
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吉原遊郭から江戸城に向かう最中に、Aがこういった。
「外の世界は大きいですね。」
「ああ、Aは吉原から今まで出たことがなかったんだよな?江戸は平和で大きい。家康様が作り上げられた町は素晴らしいだろう?」
「ええ、ただ、貴方様に教えられるとは。気が進みませんね。」
そういって着物の裾を翻す。初めての江戸の町で嬉しいのだろう。その皮肉は一言多いが。
「皮肉は要らない。江戸城まではもう少しだ。」
あらためて彼女の漆黒の目を見つめる。気持ちいくらいに黒い。流石伊万里の目だ、と思う。
伊万里家。関西の大名。一時四国を統一していた大名だ。四国と言えば・・・・まーしぃの実家だな。
まーしぃの家は小大名だから伊万里に領地を削られていてもおかしくはない。ここでAが伊万里の姫だと伝えると危険か?
となるとAの本名は明かさない方が無難か。そう考えて俺はAに向き直った。
「A、言っておくが本名は言うな。遊女名で暮らせ。」
「ああ、伊万里が家臣の家に手を出していたら密告されますからね。そのぐらいわかりますよ。」
皮肉っぽくAが言う。決して舐めていたわけではないのだが、俺の心配しすぎだということにしておこう。
心配をする必要はなかったらしい。頼もしい姫だ、と俺は思った。
「やったー!!やっとついたー!!」
「疲れた〜、はよ中言って風呂入ろやー。」
「おい、センラ!!坂田!!・・・・・って、いっちまった。」
あいつらはいつもそうだ。主君より先に城に入るのは御法度なのだが・・・・俺はそんなに規律にうるさくない。自分の方が立場が上だと一度も思ったことがない。
となりにいたまーしぃが「しょうがないな〜。」と呟く。Aはとなりで頷いていた。
「元気ですね、渉様の家臣。」
「ああ、うるさいくらいだ。」
「なんだかんだいって、浦田さんは家臣のことが好きなんですよ。」
桔梗の目が楽しげに揺れる。少しイラっと来たがあながち間違いではなかったので殴らないでおく。
「立派な主従関係ですね。」
「ありがとうございます、さぁ、中にお入りください。」
Aを紳士的に向かい入れるまーしぃを横目で見ながら、俺はゆっくりと江戸城の内部に足を踏み入れた。
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時