拾弐の巻 ページ15
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周りでは女が啼いて、それをみて男は俄然やる気を出す。というのが繰り返し行われていた。
居づらいな、と俺は感じた。吉原の中はこうなっているのか。
「和歌。気になるか?」
「ええ、そりゃあ。普通ならそういうための部屋ですので、仕方がないとは思いますが。」
やはり肝が据わっている。俺は満悦に微笑んだ。
邪魔な帽子を床に置くと、和歌と目が合った。
津々楽和歌。多分遊女名だと考えられる。津々楽なんて聞いたことないから。農民など貧しい身分は名字などがつかないし。
和歌にはきっと壮絶な過去があるだろう。俺はこいつの目をみてそう思った。
漆黒というのが引っかかる。江戸時代になる前に戦ったことのあるやつらを少し思い出す。
確か、関西の方の。名は思い出せない。名が思い出せないほど弱かったのだろう。微かに残る記憶では、たくさんの人を切りつけた・・・・気がする。
そいつらの目によく似ている。気持ち悪いほどの真っ黒な漆黒の目。
和歌がその家のものかはわからぬが、少しばかりの手掛かりとなるだろう。
というか、悔しいくらい冷静だな。
目の前の和歌はすましたような顔で俺を見据えている。この顔をどうにかして崩させたい。
「じゃあ俺らもやるか?」
勿論冗談に決まっている。そのことをこいつは感じ取っているはずだ。俺がただの客でないことぐらい。こいつならしっかりと理解をしているはずだ。
「・・・・・・・正気でございますか?」
案の定眉一つも動かさない。
いつもならここで「冗談。」と冷たく言葉を返すのだが、今日は少しこいつをからかってみたかった。
「遊女のくせにそんなことを言うのか?今、俺がお前を襲ってもお前は何も言えないんだぞ?」
流石に少し動揺したのか、眉が少し動いた。ああ面白い。愉快愉快。もっと困れ。
「それは・・・・」
口ごもったのを合図として、俺は壁に手を当てた。
立っている時だとあまり身長差ができないが、座っている和歌と膝立ちの俺ではかなりの身長差がある。
漆黒の瞳と目を合わせながら、俺は和歌の顎に手を置いて、少し上にあげた。
「これだけでも動揺か?さっきまでの威厳はどうした。お前は頭が良いのだろう?」
「大変お楽しそうで。」
案外動揺しないもんだな。家柄が物を言っているのか、遊女だから動揺しないのか。
ただ少しだけ焦っているというのを瞳は言っている。もう一押しすれば良さそうなのだが。
自分でも驚くほど積極的だ。俺らしくない。
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時