参話 ページ5
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「怖がらせるつもりはなかった。ごめんね」
ふわっとした浮遊感から暖かい温度が私を包み込む。
上から太宰治の声が聞こえたから彼に抱き抱えられてるんだろうと思う。
それでも涙は止まらなくて精神年齢が体型年齢に引きずられているんだろう。悔しい。
「ふぇ…うっ、ひっく……うー」
太宰治の服を汚すわけにはいかず必死に涙を自分の服で拭う。
そこでまた違和感があった。顔にお面がついてる。いや何故。
そこで少し涙は止まったが私はお面を上にあげて涙を拭い続ける。
「名前、教えて?」
「にゃまえ…?」
こんなに優しくしてくれてる彼でも詮索は怠らないのだろう。
でも、何故か自分の名前が解らないのだ。
過去──前世の記憶を思い出そうとすると文豪ストレイドッグスに関する記憶と死ぬ前の記憶以外に靄がかかってしまう。
誰かが私を呼ぶときも誰かを私が呼ぶときも全部に。
「わかんにゃ…い」
くそ、マジで私今の歳何歳だよ…!!まさかの舌足らずかよ!!
『な』が『にゃ』になる。このままいけば黒歴史が残るわい。
だけど彼はそんなことを気にせず次の質問に移った。それと同時に歩き出した。
「歳は?」
「わかんにゃい」
「家族」
「わかんにゃい」
「性別」
「おんにゃ?」
「…じゃあ、親の顔」
「……わかんにゃい」
転生後の記憶もない。
私がどこで生まれどこで生きて今の自分があるかなんて。
「とりあえず君を保護する」
「手前ェ、本気かよ」
「本気だよ。こんな可愛い幼子を見捨てるわけにはいかないでしょ」
「ふざけんな、いつも誰が死んでも気にし泣い手前が」
「うるさい脳筋」
「誰が脳筋だ、誰がっ!!」
二人が上で喋ってるけど…なんか平和な会話だ。
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作者名:拳銃 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年7月12日 23時