嫉妬 中也side ページ11
Aが本を持ってきた次の日。
俺は深海にしかない貝殻を土産に、彼女をずっと待っていた。夜になると光る珍しい貝殻だ。いつもAは何か持ってきてくれるから、俺も何か渡したかった。
でも、いつまで経ってもAは来ない。もう夕方になっちまった。体調でも崩したのか…?
心配になった俺は、いつもAが帰っていく城の方向へ泳いでいった。
ーー
ー
「…誰だ、アイツ」
海から彼女がいると思われる城を見ていると、部屋の外に出てくる彼女の姿を見つけた。
なんだ、体調悪い訳では無さそうだな、良かった…
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。Aの後に人間の男が出てきたのを見た瞬間、俺の心臓が変に軋んだ。
…俺の知らない人間の男と、楽しそうに談笑している。そして暫くすると、男がAのことを抱きしめ、ーーー頬にキスをした。
「…っ、何で…ッ……!」
目の前の光景を見ていると、頭がおかしくなりそうだった。
暗いなか目を凝らしてみると、彼女の顔は赤く染まっているようだった。
俺の前では、そんな顔したことねェのに…
心に渦巻く、ドス黒い感情。生まれて初めてのこの感覚は、独占欲か、それとも嫉妬心なのか…おそらくどちらも含まれているんだろう。
俺の知らないAも、全部俺のものにしたくなった。
肌寒くなってきた頃、やがて二人は室内に消えていった。
Aの部屋をその後も暫く見つめていた。明かりが消えたから、寝たのかもしれない。…まさか、男と一緒か…?
「クソ…っ」
いつの間にか力が入っていたのか、手の中に握られていた貝殻はヒビが入り欠けてしまった。
もう贈り物にならない。そのまま手を離し、海の底へ捨ててしまった。
悔しい。Aとあんなに仲睦まじく話して、触れて、笑って。
全く収まる気配がない苛立ち。
…しかし、あの光景を見たことで、俺の中に前からずっとあったある迷いに、ようやく決心が着いた。
俺もあいつと同じ世界で、隣で過ごしたい。
好きだ、好きなんだ…大好きになっちまった。
彼女と通じ合いたい。
Aの一番は、何だって俺がいい。
Aと一緒に、暮してェんだよ。
…たとえ、“あの約束”を犠牲にしても、な。
強い思い。彼女を思えば、もう止まらない。
気付けば俺は、“毒”を飲んでいた。
人間になる為に。
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ヨモギ雲(プロフ) - チョコさん» こんにちは、コメントありがとうございます!4期見ています!出番が少ないながらも、相変わらず中也さんかっこいいですね…!✨ (2023年3月30日 23時) (レス) id: 8cd691db0d (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - この話し面白くて見てます!そういえば、文スト4期始まっていますよ!! (2023年3月21日 13時) (レス) @page25 id: d38db6c248 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - こちらこそ返事ありがとうございます。作者様のペースで大丈夫です。今後も期待しています! (2021年6月29日 18時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ雲(プロフ) - ユエさん» コメントありがとうございます!ダラダラ更新で本当に申し訳ないです(汗)頑張ります! 7月からでしたっけ…?一期がまた見られるらしいですね、楽しみです! (2021年6月29日 0時) (レス) id: 4c88579f44 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - いつも楽しませてもらってます。そういえば文ストの再放送がやるみたいですよ。 (2021年6月28日 7時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨモギ雲 | 作成日時:2021年1月22日 13時