検索窓
今日:22 hit、昨日:15 hit、合計:31,613 hit

嫉妬 中也side ページ11

Aが本を持ってきた次の日。

俺は深海にしかない貝殻を土産に、彼女をずっと待っていた。夜になると光る珍しい貝殻だ。いつもAは何か持ってきてくれるから、俺も何か渡したかった。

でも、いつまで経ってもAは来ない。もう夕方になっちまった。体調でも崩したのか…?

心配になった俺は、いつもAが帰っていく城の方向へ泳いでいった。



ーー




「…誰だ、アイツ」



海から彼女がいると思われる城を見ていると、部屋の外に出てくる彼女の姿を見つけた。

なんだ、体調悪い訳では無さそうだな、良かった…


ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。Aの後に人間の男が出てきたのを見た瞬間、俺の心臓が変に軋んだ。

…俺の知らない人間の男と、楽しそうに談笑している。そして暫くすると、男がAのことを抱きしめ、ーーー頬にキスをした。



「…っ、何で…ッ……!」



目の前の光景を見ていると、頭がおかしくなりそうだった。

暗いなか目を凝らしてみると、彼女の顔は赤く染まっているようだった。
俺の前では、そんな顔したことねェのに…

心に渦巻く、ドス黒い感情。生まれて初めてのこの感覚は、独占欲か、それとも嫉妬心なのか…おそらくどちらも含まれているんだろう。

俺の知らないAも、全部俺のものにしたくなった。


肌寒くなってきた頃、やがて二人は室内に消えていった。

Aの部屋をその後も暫く見つめていた。明かりが消えたから、寝たのかもしれない。…まさか、男と一緒か…?



「クソ…っ」



いつの間にか力が入っていたのか、手の中に握られていた貝殻はヒビが入り欠けてしまった。

もう贈り物にならない。そのまま手を離し、海の底へ捨ててしまった。

悔しい。Aとあんなに仲睦まじく話して、触れて、笑って。

全く収まる気配がない苛立ち。


…しかし、あの光景を見たことで、俺の中に前からずっとあったある迷いに、ようやく決心が着いた。




俺もあいつと同じ世界で、隣で過ごしたい。

好きだ、好きなんだ…大好きになっちまった。

彼女と通じ合いたい。

Aの一番は、何だって俺がいい。



Aと一緒に、暮してェんだよ。

…たとえ、“あの約束”を犠牲にしても、な。




強い思い。彼女を思えば、もう止まらない。



気付けば俺は、“毒”を飲んでいた。









人間になる為に。

人魚、陸に上がる→←帰国


おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした!


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (50 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
89人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ヨモギ雲(プロフ) - チョコさん» こんにちは、コメントありがとうございます!4期見ています!出番が少ないながらも、相変わらず中也さんかっこいいですね…!✨ (2023年3月30日 23時) (レス) id: 8cd691db0d (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - この話し面白くて見てます!そういえば、文スト4期始まっていますよ!! (2023年3月21日 13時) (レス) @page25 id: d38db6c248 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - こちらこそ返事ありがとうございます。作者様のペースで大丈夫です。今後も期待しています! (2021年6月29日 18時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ雲(プロフ) - ユエさん» コメントありがとうございます!ダラダラ更新で本当に申し訳ないです(汗)頑張ります! 7月からでしたっけ…?一期がまた見られるらしいですね、楽しみです! (2021年6月29日 0時) (レス) id: 4c88579f44 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - いつも楽しませてもらってます。そういえば文ストの再放送がやるみたいですよ。 (2021年6月28日 7時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ヨモギ雲 | 作成日時:2021年1月22日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。