【 歌い手 】保健室 。【 センラ 】

9 日目 ページ11

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せ ｢ ならええけど … ｣



ちゃんと食べなあかんよ ? と 保健医らしい言葉を放ち ､ 再び足を進める 。




数メートル歩けば 目的の場所 ___ センラ先生の車の前 まで辿り着く 。



慣れた手つきで 助手席のドアを開けて 私を中に促す 。



｢ …… いつも ほんとにごめんなさい ｣



隣の運転席に乗り込んだ先生にそう声をかければ ､ こちらを見て微笑む 。




せ ｢ 気にせんで ､ 迷惑やないし ｣



それに …… と言葉を続ける 。



せ ｢ Aと話しとんの ､ センラも楽しいし ｣



サラッとそんなことを口にして 車のエンジンをかける 。



出発しまぁす ､ なんて声に ､ お願いします ､ と答えれば ゆっくりと進み始める車 。




大して遠くもない家までの帰り道を送ってもらうようになったのは いつからだったか 。




あっという間に着いてしまった私のマンションの前に車を停める 。




せ ｢ ほんなら 気ぃつけてな ? ｣


｢ ありがとうございました ｣



小さくお辞儀をすれば ｢ また明日な ｣ と帰ってきたので 曖昧に頷いておいた 。





階段を上って自室の扉を開ければ ､ 真っ暗な廊下が続いている 。



いつもはすぐにご飯を作り始めるけれど ､ 過呼吸を起こした今日は どっと疲れが押し寄せて ベッドに倒れ込む 。




｢ …… ｣




枕元に置かれた写真立て 。



たった1枚 ､ 家族全員が揃った写真 。




仕事で家を開けがちな父と ､ 体調を崩しやすい母の 珍しく重なった休日 。




｢ 今日しかない !! ｣ と思い立ち みんなで慌てて着替えたのは 私が中2の頃の懐かしい思い出 。




｢ ごめんね … お父さん ､ お母さん ｣




幸せそうに笑う3人 。


この形を崩してしまったのは 私だから 。



思わず込み上げる熱いものをぐっと堪える 。





センラ先生だって ､ 今は ずっと隣にいてくれているけれど ､ いつ離れてしまうか 。




《 何かあったら いつでも言ってね 》




かつての母の言葉が 先生の声と重なる 。





もう 同じ失敗はしたくないから 。


大好きで ､ それ以上に 大切なセンラ先生を失う訳にはいかない 。




昼間の 先生の心配そうな顔が浮かぶ 。




｢ もっと頑張らなきゃ ｣



暗いのを振り払うように電気をつけると ､ それを待っていたかのように聞こえるエンジン音 ｡




そっとカーテンを摘んで外を覗けば ､ 先程までマンションの前に停まっていた見慣れた車が 遠ざかっていくのが見えた 。

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