今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:77 hit
小|中|大| | CSS ゜
____東北地方に在る、とある有名な喫茶店。気侭に開くその木製の扉を潜れば古惚けた硝子が擦れる音と共に眼前に広がる、店員達のセピア色の笑顔____
___若い笑い声と共に出される珈琲は日によって異なり、一度飲めばその味を一生忘れることは不可能だと噂されるほど絶品らしい____
____まったりと心を休められるその空間は、まるで、喫茶店の時間が進んでいないような、不思議な気持ちになれる。そんな不思議な喫茶店の店員達が繰り広げる『風ぐるま』の日常___
この忙しい世間に疲れたなら、一寸ここで一息でも、如何でしょう。
ゆるゆるとした日常へ、ご案内。
。
第一話喫茶・風くるまの日常一
第二話喫茶・風くるまの日常二
____東北地方に在る、とある有名な喫茶店。気侭に開くその木製の扉を潜れば古惚けた硝子が擦れる音と共に眼前に広がる、店員達のセピア色の笑顔____
___若い笑い声と共に出される珈琲は日によって異なり、一度飲めばその味を一生忘れることは不可能だと噂されるほど絶品らしい____
____まったりと心を休められるその空間は、まるで、喫茶店の時間が進んでいないような、不思議な気持ちになれる。そんな不思議な喫茶店の店員達が繰り広げる『風ぐるま』の日常___
この忙しい世間に疲れたなら、一寸ここで一息でも、如何でしょう。
ゆるゆるとした日常へ、ご案内。
。
第一話喫茶・風くるまの日常一
第二話喫茶・風くるまの日常二
(´Ωー)<<にゅぅぁぁぁぁぁぁ
「いらっしゃいませ」
カランコロンと鳴る鈴の音と共に入ってきたのは女性のお客様。ちらりと周りを見ると、神田さんが俺に向かって顎をくいっと上げた。行け、の合図だ。
「何名様でしょうか」
俺が急いで接客に向かうと、茶髪のミディアムの女性が少しおどおどしく「二名で」と指でピースをつくった。
こういう所にあんまり来たことないのかな?
そんなことを思いながら、入口近くの席に二人を案内した。
「ご注文がお決まり次第お呼びください」
「は、はい!」
俺が腰を折ってお辞儀をすると、ミディアムの女性は元気よく返事をして、一緒に居た同じ茶髪のボブの方にまた、おどおどしく話かける。
「おい、結構可愛い子じゃん」
「神田さん。そうですか?」
「そうだって。あのおどおどした子とか、可愛くない? 服装もまさに理想だよなー」
「そういうもんなんですかね」
「そういうモンだって。田中はどっちが好み?」
「俺ですか? 俺はボブの方ですかね。お姉さんみたいな感じの」
「え、何、田中はそっち系なわけ?」
「いや、そういうわけじゃなくて、こう、静かに笑って居られる人って、よくないですか? 過度に女の子過ぎるのも一寸……。ほら、俺妹が居るので」
神田さんからの言葉を全力で否定して俺は言った。
「あー……そっか。田中には身近に女の子が居たな。やっぱりあれなの? お兄ちゃんなんて知らないっ! ってなるの?」
「お前、裏声とか気色悪すぎんぞ」
「えー越前ちゃん酷っ」
「ちゃん付けすんな! シバくぞ!」
「あっははは、悪ぃ悪ぃ」
越前さんと神田さんのかけ合いを聞きながら、俺は、女の子なんて、神田さんが考えてる程可愛いわけじゃないですよ、と心の中で呟く。
「あの、注文いいですか?」
「あ、はーい」
さっきのミディアムの子が手を上げた。
話に夢中で、すっかり忘れてた……。
「お待たせしました。ご注文は?」
「アイスで、モカとキリマンジャロ。それと、抹茶ラスクをください」
「全てブラックで宜しいんですか?」
「あ、いえ、あの……」
慣れない注文に慌てるミディアムの方を見ていたボブの方が、
「モカはカフェラテ、キリマンジャロはブラックでお願いします」
とハキハキと答えた。
「流石マユちゃん、ありがとー」
「いいってことよ」
「では、カフェラテのモカとキリマンジャロ、抹茶ラスクで宜しいですね?」
「は、はい!」
俺はオーダーを紙にメモしたファイルごとカウンターに出す。越前さんは器用に喋りながら拭いていたお皿を置き、少し見てから弘津さんにまわした。
「それにしてもよ」
神田さんが食器を片付けながら口を開いた。
「越前って、どんな子が好みなんだ?」
「はあ? いきなりどうしたんだよお前」
越前さんがパンを切りながら答えた。その声は心なしか少し動揺している。
「お、越前ちゃん動揺してるなー。もしかして、好きな子居るの?」
「違ぇよ」
越前さんのラスクを作る手に少し力が籠る。
「あ、分かった! 彼女?」
「お前人の話聞いてねぇだろ」
「え、彼女じゃなきゃ、もしかして……彼氏?」
「何でそうなるんだよ! お前俺の話聞けよ!」
「聞いてるけどさー。お前、そういう浮いた話ねーんだもん。詰まんねぇよ」
神田さんはお盆を持って壁にもたれかかりながら言った。
「そうかよ」
「俺絶対越前ちゃんはモテると思うんだよねー。顔良いし」
「人間顔じゃないんじゃないですか?」
俺がそう言うと、神田さんは「でもさー」と続けた。
「俺が会った女の子は、大体の子が顔で決めてたぜ。確かに性格重視って子も居たけど、やっぱ人間顔だと思うんだよねー。もしそうじゃなくても、越前ちゃんならモテモテさー」
「まあ、確かに、越前さんは結構人気ありますよね。ほら、坂田さんの次に」
俺が坂田さんの名前を出した途端、神田さんと越前さんの顔が少し曇った。
「俺、あの人苦手なんだよね」
「何処がです? 結構面倒見がいいと思いますけど」
そう言うと神田さんは俺にビシッと指を指した。
「そこだよ。面倒見良すぎるんだよな、あの人なあえ越前」
「嗚呼。お節介は二人も要らねぇよ」
「そうそう。お節介キャラは俺一人で充分だって」
「俺からしたらお節介じゃないですけど」
「田中は志村って言う過保護な親が居るからだって。もし居なかったら絶対俺等と同じ意見だぜ」
「そうなんですか?」
「んだんだ」
女の子の好みからいつの間にか坂田さんの話になっていた時、背後から大きな、それでいて憤怒の色が伺える声で名前を呼ばれた。
「一寸風船さん達! いつまでも駄弁ってないでちょうだい! 私一人でどれだけ働いてると思ってるのよ!」
恐る恐る振り向くと、そこには仁王立ちで鬼のような形相で俺達を見る、桃花ちゃんが居た。
「もう! 私だけで五人分は確実に働いてるわよ! 貴殿方のお給料、こっちに渡してもらっても足りないくらいね!」
そう言いながら、桃花ちゃんは店内をあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら目まぐるしく働いている。
「ごめんごめん」
僕は小走りで桃花ちゃんの側に駆けつけ、桃花ちゃんが持っていた注文の品が乗っているお盆を僕の物と取り替えた。
桃花ちゃんは当然だと言うような顔つきで僕のお盆を受け取り、呼ばれた席まで小走りで向かった。
「それに、今日は私の出勤日じゃないのよ。シムさんが急な用事で来れないからっていきなり今朝の七時半に呼ばれて来ただけなんだから。お陰で今日の私の予定が全てパアよ、パア」
桃花ちゃんはお客さんに水を出しながら言った。
「そんなにウジウジ言うなよー。俺らが決めたことじゃないんだから。文句があるなら、志村か店長に言えよな」
「あら、そんなの分かってるわよ。文句が言えるならとっくの当に言ってるわ。言えないから、仕事もしないで駄弁ってる先輩達に愚痴ったんじゃないの。ねえ、開会式さん?」
開会式さん……。桃花ちゃん、これまた独特なアダ名をつけるなぁ……。
「だからその開会式ってアダ名止めろよなー。カッコ悪い。つか、何で開会式? 俺開会式に何かヤバイことやったっけ」
「神田さんは開会式当日みたいに、会うとなんだが嫌になるから、開会式」
「何それ酷くね?」
「大丈夫ですよ、神田さん」俺はフォローにまわる。「俺なんて、いつもふらふらして頼りないから風船さんですから」
「田中の方角マシじゃん。ま、あだ名でさえも呼んでもらえない越前よりはマシか。ねー越前ちゃん」
神田さんはすべらかな動きでカウンター越しの越前さんに言った。越前さんは神田さんのそれを「うるせー」とだけ言って、黙々と洋菓子を作っては他の店員に指示をする。
因みに、志村はシマさん、坂田さんは貴殿、新人アルバイトの中島君は猫ちゃんだ。
今日は何時もより賑やかで、俺達従業員も実のないお喋りをしている暇なんて本当はない。桃花ちゃんの言う通りなのだ。
それでもしてしまうのは、きっとその状況になれてしまったから。
「他の店に行ったら、一ヶ月経たない内に頚になっちゃうなぁ……」
俺はなんとなく呟いてみた。
「ン? 何か言ったか?」
「いや、何でもないですー」
「喋ってんなよ田中ー。忙しいんだから!」
神田さんが俺に向かってそう言うと、別のテーブルから「さっきまで駄弁ってたアンタが言わないでくれる!」と甲高い桃花ちゃんの声が神田さんに向けられる。それに対して神田さんは、へいへい、と適当に返事をして桃花ちゃんを態と怒らす。
相変わらず仲悪いなぁ。
「田中! 突っ立ってんなら帰れよー」
「あ、はい。すみません越前さん」
「田中、お客様の接客は任せた!」
「はーい」
「風船さん、十番と七番のお片付け宜しくね」
「分かった」
俺は先ず、カウンターで珈琲を三つ受け取り、その足で接客をしてから珈琲を五番テーブルに置き、手が空いたところで七番と十番のテーブルに乗っている皿やカップを片付けた。
「田中」
「はーい」
「田中」
「はーい」
「風船さん」
「分かった」
皆の声を頼りにあっちへくるくるこっちへくるくる。
「田中」
「田中」
「風船さん」
俺はふと、気がついた。
「あれ? 何か俺ばっかり動いてない?」
さっきまでの賑やかさが一段落した午後七時。一息ついて少しの間休憩所で休んでいると、あの忙しかった店内の光景が冷静に思い出されていく。
……やっぱり、何か俺だけ動いてる気がする。
腑に落ちない所もあるが、矢張り気のせいだと思って俺は珈琲を一口飲んだ。
……やっぱり、俺だけ動いていたような……。
「いらっしゃいませ」
カランコロンと鳴る鈴の音と共に入ってきたのは女性のお客様。ちらりと周りを見ると、神田さんが俺に向かって顎をくいっと上げた。行け、の合図だ。
「何名様でしょうか」
俺が急いで接客に向かうと、茶髪のミディアムの女性が少しおどおどしく「二名で」と指でピースをつくった。
こういう所にあんまり来たことないのかな?
そんなことを思いながら、入口近くの席に二人を案内した。
「ご注文がお決まり次第お呼びください」
「は、はい!」
俺が腰を折ってお辞儀をすると、ミディアムの女性は元気よく返事をして、一緒に居た同じ茶髪のボブの方にまた、おどおどしく話かける。
「おい、結構可愛い子じゃん」
「神田さん。そうですか?」
「そうだって。あのおどおどした子とか、可愛くない? 服装もまさに理想だよなー」
「そういうもんなんですかね」
「そういうモンだって。田中はどっちが好み?」
「俺ですか? 俺はボブの方ですかね。お姉さんみたいな感じの」
「え、何、田中はそっち系なわけ?」
「いや、そういうわけじゃなくて、こう、静かに笑って居られる人って、よくないですか? 過度に女の子過ぎるのも一寸……。ほら、俺妹が居るので」
神田さんからの言葉を全力で否定して俺は言った。
「あー……そっか。田中には身近に女の子が居たな。やっぱりあれなの? お兄ちゃんなんて知らないっ! ってなるの?」
「お前、裏声とか気色悪すぎんぞ」
「えー越前ちゃん酷っ」
「ちゃん付けすんな! シバくぞ!」
「あっははは、悪ぃ悪ぃ」
越前さんと神田さんのかけ合いを聞きながら、俺は、女の子なんて、神田さんが考えてる程可愛いわけじゃないですよ、と心の中で呟く。
「あの、注文いいですか?」
「あ、はーい」
さっきのミディアムの子が手を上げた。
話に夢中で、すっかり忘れてた……。
「お待たせしました。ご注文は?」
「アイスで、モカとキリマンジャロ。それと、抹茶ラスクをください」
「全てブラックで宜しいんですか?」
「あ、いえ、あの……」
慣れない注文に慌てるミディアムの方を見ていたボブの方が、
「モカはカフェラテ、キリマンジャロはブラックでお願いします」
とハキハキと答えた。
「流石マユちゃん、ありがとー」
「いいってことよ」
「では、カフェラテのモカとキリマンジャロ、抹茶ラスクで宜しいですね?」
「は、はい!」
俺はオーダーを紙にメモしたファイルごとカウンターに出す。越前さんは器用に喋りながら拭いていたお皿を置き、少し見てから弘津さんにまわした。
「それにしてもよ」
神田さんが食器を片付けながら口を開いた。
「越前って、どんな子が好みなんだ?」
「はあ? いきなりどうしたんだよお前」
越前さんがパンを切りながら答えた。その声は心なしか少し動揺している。
「お、越前ちゃん動揺してるなー。もしかして、好きな子居るの?」
「違ぇよ」
越前さんのラスクを作る手に少し力が籠る。
「あ、分かった! 彼女?」
「お前人の話聞いてねぇだろ」
「え、彼女じゃなきゃ、もしかして……彼氏?」
「何でそうなるんだよ! お前俺の話聞けよ!」
「聞いてるけどさー。お前、そういう浮いた話ねーんだもん。詰まんねぇよ」
神田さんはお盆を持って壁にもたれかかりながら言った。
「そうかよ」
「俺絶対越前ちゃんはモテると思うんだよねー。顔良いし」
「人間顔じゃないんじゃないですか?」
俺がそう言うと、神田さんは「でもさー」と続けた。
「俺が会った女の子は、大体の子が顔で決めてたぜ。確かに性格重視って子も居たけど、やっぱ人間顔だと思うんだよねー。もしそうじゃなくても、越前ちゃんならモテモテさー」
「まあ、確かに、越前さんは結構人気ありますよね。ほら、坂田さんの次に」
俺が坂田さんの名前を出した途端、神田さんと越前さんの顔が少し曇った。
「俺、あの人苦手なんだよね」
「何処がです? 結構面倒見がいいと思いますけど」
そう言うと神田さんは俺にビシッと指を指した。
「そこだよ。面倒見良すぎるんだよな、あの人なあえ越前」
「嗚呼。お節介は二人も要らねぇよ」
「そうそう。お節介キャラは俺一人で充分だって」
「俺からしたらお節介じゃないですけど」
「田中は志村って言う過保護な親が居るからだって。もし居なかったら絶対俺等と同じ意見だぜ」
「そうなんですか?」
「んだんだ」
女の子の好みからいつの間にか坂田さんの話になっていた時、背後から大きな、それでいて憤怒の色が伺える声で名前を呼ばれた。
「一寸風船さん達! いつまでも駄弁ってないでちょうだい! 私一人でどれだけ働いてると思ってるのよ!」
恐る恐る振り向くと、そこには仁王立ちで鬼のような形相で俺達を見る、桃花ちゃんが居た。
「もう! 私だけで五人分は確実に働いてるわよ! 貴殿方のお給料、こっちに渡してもらっても足りないくらいね!」
そう言いながら、桃花ちゃんは店内をあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら目まぐるしく働いている。
「ごめんごめん」
僕は小走りで桃花ちゃんの側に駆けつけ、桃花ちゃんが持っていた注文の品が乗っているお盆を僕の物と取り替えた。
桃花ちゃんは当然だと言うような顔つきで僕のお盆を受け取り、呼ばれた席まで小走りで向かった。
「それに、今日は私の出勤日じゃないのよ。シムさんが急な用事で来れないからっていきなり今朝の七時半に呼ばれて来ただけなんだから。お陰で今日の私の予定が全てパアよ、パア」
桃花ちゃんはお客さんに水を出しながら言った。
「そんなにウジウジ言うなよー。俺らが決めたことじゃないんだから。文句があるなら、志村か店長に言えよな」
「あら、そんなの分かってるわよ。文句が言えるならとっくの当に言ってるわ。言えないから、仕事もしないで駄弁ってる先輩達に愚痴ったんじゃないの。ねえ、開会式さん?」
開会式さん……。桃花ちゃん、これまた独特なアダ名をつけるなぁ……。
「だからその開会式ってアダ名止めろよなー。カッコ悪い。つか、何で開会式? 俺開会式に何かヤバイことやったっけ」
「神田さんは開会式当日みたいに、会うとなんだが嫌になるから、開会式」
「何それ酷くね?」
「大丈夫ですよ、神田さん」俺はフォローにまわる。「俺なんて、いつもふらふらして頼りないから風船さんですから」
「田中の方角マシじゃん。ま、あだ名でさえも呼んでもらえない越前よりはマシか。ねー越前ちゃん」
神田さんはすべらかな動きでカウンター越しの越前さんに言った。越前さんは神田さんのそれを「うるせー」とだけ言って、黙々と洋菓子を作っては他の店員に指示をする。
因みに、志村はシマさん、坂田さんは貴殿、新人アルバイトの中島君は猫ちゃんだ。
今日は何時もより賑やかで、俺達従業員も実のないお喋りをしている暇なんて本当はない。桃花ちゃんの言う通りなのだ。
それでもしてしまうのは、きっとその状況になれてしまったから。
「他の店に行ったら、一ヶ月経たない内に頚になっちゃうなぁ……」
俺はなんとなく呟いてみた。
「ン? 何か言ったか?」
「いや、何でもないですー」
「喋ってんなよ田中ー。忙しいんだから!」
神田さんが俺に向かってそう言うと、別のテーブルから「さっきまで駄弁ってたアンタが言わないでくれる!」と甲高い桃花ちゃんの声が神田さんに向けられる。それに対して神田さんは、へいへい、と適当に返事をして桃花ちゃんを態と怒らす。
相変わらず仲悪いなぁ。
「田中! 突っ立ってんなら帰れよー」
「あ、はい。すみません越前さん」
「田中、お客様の接客は任せた!」
「はーい」
「風船さん、十番と七番のお片付け宜しくね」
「分かった」
俺は先ず、カウンターで珈琲を三つ受け取り、その足で接客をしてから珈琲を五番テーブルに置き、手が空いたところで七番と十番のテーブルに乗っている皿やカップを片付けた。
「田中」
「はーい」
「田中」
「はーい」
「風船さん」
「分かった」
皆の声を頼りにあっちへくるくるこっちへくるくる。
「田中」
「田中」
「風船さん」
俺はふと、気がついた。
「あれ? 何か俺ばっかり動いてない?」
さっきまでの賑やかさが一段落した午後七時。一息ついて少しの間休憩所で休んでいると、あの忙しかった店内の光景が冷静に思い出されていく。
……やっぱり、何か俺だけ動いてる気がする。
腑に落ちない所もあるが、矢張り気のせいだと思って俺は珈琲を一口飲んだ。
……やっぱり、俺だけ動いていたような……。
このホムペをお気に入り追加
登録すれば後で更新された順に見れます
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような占いを簡単に作れます → 作成
作者名:一介の爬虫類 | 作成日時:2017年9月15日 22時