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此れは、とことん出来ない貴女の努力が報われるお話―― - 2024年5月5日

【今日は乱歩さん(side)です】

駄菓子屋で買い物を終え、帰ろうとした時だった。
視界の隅を見覚えのある人物が通り過ぎた。
YOUだ。
「YOUー！」
任務が終わって探偵社に帰る処だと予測し、一緒に帰ろうと云うべく声をかけた。
が、声を掛けて気づいた。YOUは頭の天辺から爪先まで、びしょ濡れだった。
――辺りは晴天(丶丶)なのに、だ。
出先が雨だった事も考えにくい。
名前を呼ばれてゆっくり振り返ったYOUは、泣いていた。
「ああ、乱歩さん――」
「一寸！びしょ濡れじゃないか！其れどうしたの」
「あー、はは、私に武装探偵社なんて向いてないみたいです……」
涙を流しているのに終始笑顔を浮かべ、へらへらしているのがやけに癪に障った。
「この際探偵社の利益なんてどうでもいいけど、何へらへら平気なフリしてるの」
率直に思った事をぶつけると、YOUは目を見開いた。
「――だって、任務、失敗しちゃったんですよ！もうこれで、今月に入って六回目です……皆さんいつも励ましてくださるけど、そろそろ愛想尽かされるに決まってます！」
――だから、無理矢理にでも笑わないと、私――
彼女が零した言葉は確かに本音であり、心の叫びであった。
「君は莫迦なのかい？探偵社は君に愛想を尽かす程落ちぶれた集団じゃない」
「っ……でも、書類だって綺麗に纏められないんですよ。異能力だって使いこなせない。これじゃ唯保護されてるだけじゃないですか！」
確かに、YOUは暫く前に異能力が暴走したところを探偵社に保護されたのだ。しかし、保護されるだけが嫌らしくどうにか探偵社の為に働こうとしてくれている。
仮でも社員という名を背負っている者として。
「――出来る出来ないがこの世の全てじゃあない。YOUは鈍いから気づいてないだろうけどね、君の努力は沢山の社員に認められている」
「――実ってないのに？」
「実るとかそんなことは見てない。君がいつも直向きに努力しているという事実が他の社員の励ましになっていることにも気づいてないなんて、莫迦だねえ」
例えば、いつも早朝一番に出社して社内を掃除していること。毎日、社員一人一人に挨拶するところ。其れから……。
「ほら、帰るよ」
僕はらしくもなく上着を脱いで、YOUの肩に掛けた。
「――有難う御座います。っ、もう少しだけ、頼っても、いいですか――？」
珍しく彼女の弱った姿を見て矢も盾もたまらず……甘味処へでも寄り道して帰ろう、と手を引いた。

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