【キメツ学園】ちょっとだけ、秘密。

8種類の結果パターン

本日の結果です。 - 2024年5月7日

○折り鶴

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「ねぇ」

「…？」


ある日の帰り道。

駅へ向かって一人歩いていた私は、突然の呼び掛けにふと立ち止まった。
振り返れば、そこには腰辺りまである長い黒髪に学ラン姿の少年が一人。

制服はキメツ学園の中等部のものだ。
何処となく見覚えがある気もする顔だが、知り合いではなかった。


「…えっと、何か？」

「これ、落としたよ」


特に心当たりもなかったので問い掛けてみれば、少年は掌に乗った小さめの折り鶴を差し出した。

何度もやり直された跡が残り、ふにゃりと皺の寄った羽がやけに目立つその鶴は、間違いなく私が弟にもらった折り鶴だった。


「すみません、ありがとうございます」

「……」


頭を下げて受け取りながら、軽く笑いかければ、少年の視線はそのまま手元の鶴へと移される。
じっと見つめたかと思えば、その眉を僅かに顰めた。


「下手だね、その鶴」

「…確かに、ちょっと歪(いびつ)かな」

「貴方が折ったの？」

「ううん、弟が。いま練習中らしくて」


此方を覗き込んでくる少年は、「ふーん」と興味なさげに呟くと、徐(おもむ)ろに鞄から折り紙を取り出してしゃがみ込んだ。

自分の鞄を机代わりに、淡々と紙を折ってゆく。
所々で手を止めてぽつぽつと説明を加える彼は、どうやら折り方のコツを教えてくれているようだ。


「得意なんだね」

「うん…折り紙、好きなんだ」


何とも感情の読み取り辛い表情をしているが、楽しいんだという事は伝わってくる。
そんな彼を見ていれば、歪みのない美しい鶴がすぐに完成した。


「折り紙は、強く折った方が綺麗にできる」

「なるほど…君、本当に上手だねぇ」

「別に……。これは、あげる」

「え、いいの？」


弟のよりも幾分大きなその鶴を、ずいと差し出してくる彼。
戸惑いつつ受け取ろうとしたその時、遠くの方にもう一人、彼と全く同じ姿(・・・・・)をした少年が現れた。

…これはどういう事だ。


「無一郎、何やってんだ！帰るぞ！」


ハキハキとした声が辺りに響く。
ちらりと後ろを見た後、無一郎君と言うらしい彼は「行かなきゃ」と呟き、すっと立ち上がった。


「じゃあね」

「あ、ありがとう」


慌ててお礼を述べた私に、彼はゆるく笑むと走って行ってしまった。
不思議な子だな＿＿＿なんて。
その時はそう思っただけだったけれど。

家に帰った私が、テレビに映る中学生の “双子将棋士” の話にびっくりするのは、また別のお話。


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