何故か同姓同名の人が複数居るんですけど

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ややこしいったらありゃしない…… - 2024年5月12日

●織田作之助(文スト)と夏目漱石(文アル)



「何を読んでいるんですか？」
「あ、夏目さん……坊っちゃんです」
「おや、嬉しいですね。私の書籍を読んでいただけるとは」


紅茶を片手に喫茶店で本を読んでいると、頭上から穏やかな声色が飛んできた。顔を上げると、最近知り合った少し老いた風貌をした男性が見えた。


「相席よろしいですか？」
「どうぞ」


彼は人の良さそうな笑みを作り、私の座っている椅子の丸机の向かい側に座った。


「羊羮が食べたいですね」
「無いですね……あ、ケーキならありますよ」
「それにしましょう」


彼が店員にケーキを注文した後、喫茶店の扉が開いた。


「YOU、此処に居たか」
「織田作さん」
「太宰が捜していたぞ」
「え……私、組織に所属してませんよ……太宰さんったら、何用なんですか」


織田作さんが私の横に腰掛け、メニューを開いた。直ぐに伽哩飯を頼んだ。


「好きですね、それ」
「嗚呼」
「おや、甘い物も食べないと体に悪いですよ？」
「そうですね、偶には…………あの、どちら様で？」
「これは名乗り遅れました。夏目漱石です」


夏目さんは微笑んだが、織田作さんは少し目を見開いて彼を見ていた。驚いている表情に見える。


「あの……俺の事……覚えていますか？」
「はて？君の様な青年には会った事は無いのだけどね……」
「織田作さん、若しかして夏目さんに会った事があるんですか？」
「嗚呼……人違いかもしれん……」


気まずい雰囲気になったが、店員がケーキと伽哩飯を持って来た。黙々と彼等は食べだした。
織田作さんが食べている伽哩飯からスパイスの香りがして、小腹が空いてきた。
美味しそうに食べている織田作さんも悪いと思う。


「美味しそうですね」
「少し食べるか？」
「え？良いんですか？」
「子どもみたいに欲しがっている顔をしていたからな」


伽哩飯の乗ったスプーンを差し出された。其れを口に含むと、夏目さんは軽く笑った。
程好い辛みにほくほくのお米の甘味とマッチしていて、美味しい。唯美味しい。


「ははは、君たちは仲が良いね」
「あ」
「そう云えば、此れで既に食べてたな」
「うわぁお……其れを疾く云ってくださいなぁ……」


顔が赤くなって、丸机に顔を突っ伏した。
織田作さんはそんなに気にしてないみたいだし、こんな私を見て未だ笑っている夏目さん。あーもう帰りたい。

太宰さんに会った際に、「間接キスしたんだ。へえ、織田作が先なんだ」と真顔で迫られた。

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