【文スト】喫茶店で働いた。文豪達に愛された。

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本日のお相手は…？ - 2024年5月12日

今日のお相手は鼠の…
※付き合ってません。彼→←貴方


人通りの少ない通りにある喫茶店、閉店五分前。

普段なら店を閉じる準備をしている時間だが、温かい珈琲を新しく作った。

ことり、とマグカップを机に置いたその時、からんと扉についた小さな鐘の音が鳴る。誰か来た。

…そう認知した、と同時に声が聞こえた。

「お久しぶりです、YOUさん」

一週間ぶりに聞いた、ずっと会いたかった彼の声。

いつの間にか椅子に座っていた、深紅の瞳、肩にかからない黒髪、特徴的なロシア帽…………。

「フョードルさん！」

お待たせしてしまいましたねと微笑む彼。

彼の職業は知らない…けど、この喫茶店は完全中立地帯。

彼がどんな人物でもこの場所では彼を受け入れる。

…しかし普段の仕事が忙しいのか、人に気づかれてはいけないような、＿犯罪者だとか＿そんな仕事だからなのか。

彼は何時も私に来る日付を云って、その日の一番人が少ない時間である閉店直前に来る。

私は彼に逢えるのが幸せで、此の時を楽しみにしているのだ。

「貴方の淹れる珈琲は深みがあって…本当に美味しいですね、毎日飲みたいものです」

「そう云って貰えると嬉しいです。何時も忙しそうな貴方に癒やしをお届けできたらと思って…私で良ければ毎日お淹れしますよ」

私が心からの笑みを浮かべると、彼は驚いたのか動きを一瞬止めた。

「…貴方の笑顔はとても可憐です」

私の顔に全身の熱が集中する。

「と、突然どうしたんですか？毎回ですが…急に云われるとどうしても照れてしまいます」

「本意ですよ、これがぼくの」

「〜止めてくださいｯ！」

顔を隠して云う私に向けてくす、と。

「揶揄いが過ぎましたね。今日はこのあたりにしておきましょうか」

立ち上がったフョードルさん。

私は彼を見送るために扉まで共に向かった。

「短い間でも会えて嬉しかったです…ああそうだ、“返事”は次回聞かせて頂きます。楽しみにしていますよ」

颯爽と店内から出ていく彼の言葉の本意がわからず、再びカウンターに戻りマグカップを片付けようとする…とそこに小さな紙が挟まっていることに気づいた。

そこには「Я хочу, чтобы это было только для меня.」という文字。

なんだろう。

そう思い辞書を開いてみれば、出てきたのは…

「ぼくだけの物になって欲しい」

…来週彼が来た時、どう答えようか。


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