【歌い手】おないどし。【日替わり】

20種類の結果パターン

誰よりも近くで、君のこと――― - 2024年5月14日

＠天月




「YOUっ」

…なんで

「これ落したでしょ?」

よりによって、手紙の宛人に拾われてしまったんだ


『あ、あり…がと』


ない、ないと半泣きでカバンの中を探していた。
探し物は、ラブレター。

今目の前にいる彼に向けて書いたもの


『読んで…ないですよね』

思わず敬語になりながら尋ねた。

「まさか、読むわけないでしょ?」
『だよねー』

どうしよう

それはよかったんだけど、ますますタイミングがわからなくなってしまった。


「落とすとかドジだなぁ、大切な歌詞さんへの手紙なんだから、落としちゃダメでしょ?」


『…え?』

頭の後ろで腕を組んで、天月は言った。


「部活の用事でいつも来る、歌詞さんって人宛でしょ?それ。
かーっこいい先輩さんだよねー!!ハードル高そうだけど、まぁ頑張れ」


違う

違うよ天月


手元に戻ってきた手紙を見る。

―――こんなの


こんなもののせいで、そんな誤解が生まれるなら

こんな、もの



ビリビリと大きな音をたてて、手紙をやぶった。
いらない。こんなものいらない。


「YOU!?何…何、してるの、バカじゃないの!?

　そ、そりゃハードル高いけど、何もあきらめることっ…」

足元に、真っ二つになって落ちた手紙を彼があわてて拾う。
ちぎれた封筒から、これまたちぎれた便箋がすべり出た。



「あ…」


いいや、帰ろう

カバンを持って教室のドアに向かう




つもりだった。




ふいに、後ろから強く抱きしめられる。

とにかく引き留めたくて、がむしゃらに手を伸ばしたみたいな、強引な腕が後ろからお腹にまわった。



「待って…」


肩に天月が顔をうずめる。


「待ってよ…そん、な……」


もっと、細々にちぎっておけばよかった




「…うれしいよ……そんなの、うれしすぎる………」

『え?』


「ねぇ、俺の見間違いじゃないよね?あの手紙。

　文の書きはじめに、“天月へ”って」


『…天月の、バカ』

「ごめん、ひどい勘違いした…だって悔しかったんだ、

ずっと好きだった


好きだったのに、こんな簡単にYOUの気持ち、持っていかれるのかって」


確かめるみたいに、お腹にあった腕が私を抱きしめなおす。
返事をするつもりで、その腕を握った。


(ちぎっちゃってごめんね)


ラブレターは

…どこまでも、恋する人の味方。

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