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その日の夜。
私は高専にある自販機の前で、携帯を握りしめていた。
夕方、2人と別れてから少し休憩して、それから冷静になれるよう、夜風に当たりに来た。
ここでなら、きっと伝えたい事を伝えられる。
私は、携帯に、母の番号を打ち込んだ。
耳に当て、コールを聞きながら声を待つ。
「…もしもし。A?」
「お母さん」
何度も聞いてきた声だ。
「貴方から電話をしてくるなんて、よっぽど良い事?大学は、決めたの?だとしたら今からでも勉強しなさい。ハンデを背負っているんだから」
「お母さん、あのね、私」
“人を救う仕事に就きました”
そう言った途端、母の息を飲む音が聞こえた。
「大学には行きません。この仕事で生きていくつもりです」
「あ…貴方何を言っているの!正気!?」
「はい」
焦っているのが、電話越しでも分かる。私も、震えが止まらなかった。
「今までの苦労をドブに捨てるなんて真似、許すものですか!誰が貴方を育てたと思っているの!」
「…ごめんなさい」
「考え直しなさい、お願いだから」
これ以上私を困らせないで、そう呟かれて、下唇を噛む。
あのね、お母さん、あのね。
「…お母さん、私、貴方のトロフィーじゃないの」
「なっ…」
「何度だって我慢してきた。私なりに頑張った。失望されないように必死に走って、その結果が幸せになると信じて疑わなかった。実際幸せだったの、皆に認められて、良い子だって褒められる事は」
何も返事の無い母に、さらに続ける。
「けど、終わり無い階段を上がって行くには、私、ちょっと臆病者だっただけ。だから、私はやめます。この仕事をできる限り頑張ってみます」
「…ダメよ、そんな……お父さんも許さないわよ…」
母はショックを受けているようだった。今まで反抗したことが無かった私が、自分の意見を言っていることに。
「お母さん、私を育ててくれてありがとう。今日、仕事仲間に褒められたの、お母さんのおかげ。私を作ってくれてありがとう。自分を嫌いにならなくて済んだの。
でも、この呪いはここで終わりにする」
「縁を切ろう」、そう告げれば、母は苦しそうに声を出した。
私、最高傑作でしょう?お母さん。
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作者 - 紅葉さん» 弐の方にもコメントしてくださっていたんですね!気づくのが遅れてしまってすみません!読んでくださってありがとうございます! (2021年2月24日 22時) (レス) id: abf4ad4153 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 五条先生の創作アルバム怖いですね……最後のセリフで「ヒェッ」ってなりました……。面白いです! 真希さんのツンツン具合がまた好き……続き読んできます (2021年2月22日 8時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
作者 - ゆうなさん» わっ、本当に申し訳ございません…。修正させていただきました!今後も当作品をよろしくお願いします! (2021年2月6日 23時) (レス) id: abf4ad4153 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな - いつも楽しく読ませて頂いています!あの、22話くらいから、名前変換ができなくなっている気がします。華瑠→華琉になっているからだと思われます!此方の不具合でしたらすみません…これからも応援してます!! (2021年2月6日 11時) (レス) id: 3ecb08afbf (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2021年1月26日 23時