最終話:明日へ ページ22
女性は縁側に乗り出して家の中を覗き見る
長年の付き合いである老人とは、気兼ね無しに家に入れるのだ
隣でボンヤリと外を見つめている老婆に気づくこともなく…付けっぱなしの電灯に違和感を覚えた
居間の机に…突っ伏した状態で眠っている老人の姿があった
「あ・ざ・み・さ・ん!!…もう紅莇さんったら…」
サンダルを脱ぎ、家の中に上がり込むとユサユサと老人の肩に触れて身体を揺する
…その身体を石のように固く、氷のように冷たかった
「…あ、紅莇さん…?」
…反応はない
ただ満足げに…老人は微笑んで眠るように死んでいた
「紅莇さん!紅莇さんッ!!」
御歳78歳
老人は、大病に患うこともなく 天寿をまっとうして召された
居間で混乱している女性を他所に、縁側に座っている老婆は嬉しそうにニコニコとしている
「«…待ちくたびれましたよ»」
そう呟くと、老婆もそこから姿を消した
…それから凡そ12年後
フカフカと寝心地のいい椅子で眠っていた五条は目を覚ました
開け放たれた窓から優しい風が吹き、窓際に飾ってある花が揺れた
懐かしい夢を見ていた気がする
…そうだ あの時の女の子…なんて名前だっけ?
あの少女と出会って以降…色々なことが度重なって、それ以前の記憶が曖昧だ
傑と何か約束をした気がする…何を?
…強烈すぎた あの蒸し暑い夏のせいで…何もかも忘れてしまったのか
《───悟》
…顔も、名前も思い出せない
なのにずっと頭から離れない少女
「…あの時の子、元気にしてるかな」
悟はフフッと1人で笑うと、窓の外に目を向けた
空は青く…あの時、あの少女と出会った時のように澄み切っていた
河川敷にかかった橋の上
私は橋に寄りかかって真っ青な空を見上げていた
水の流れる音が心地良い
長く降り続いた雨もとうに止み、まさに台風一過だ
「紅莇ー!」
私を呼ぶ声に、ふと目を向けた
「ごめーん!任務先もう1つ先の橋だってさー!」
「ったく 虎杖が地形なら俺に任せろって言うからよ?!」
「えぇ?!俺ぇ?!」
「…此奴を信用したお前も悪いだろ」
「はー?!何よそれ私のせいだって言いたいの?!」
そう言い争ってはいたが、直ぐに私に向き直ると伏黒は此方を見つめ、野薔薇は大きく手を振って私を呼ぶ
初めての1年全員揃っての任務だ
今にも溢れそうな高揚感をどうにか抑えてはいるが、ふと笑みが零れた
少し肌寒い風が頬を撫でる
『────今行くよ!』
私は3人の元に駆け出した
〜完〜
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セイ - いやーそう思えて頂いて良かったです もう少しで過去編が終わって一時休載になりますね…またアニメ2期が始まると同時に再開する予定ですので、ぜひぜひロビンさんには楽しみにして下されば幸いです (2021年5月17日 23時) (レス) id: 8e72f4c5b9 (このIDを非表示/違反報告)
ロビン - なんかもう色々しんどい、、!!最後泣いてたのってごじょせん達との思い出が消えたって考察でいいですかね?!しかもミィちゃん、、!!(TT)つらすぎふ、、、 (2021年5月17日 21時) (レス) id: 5a02811cab (このIDを非表示/違反報告)
セイ - いつもありがとうございます!伏線…どうでしょうかねぇ? (2021年4月26日 0時) (レス) id: 8e72f4c5b9 (このIDを非表示/違反報告)
ロビン - 更新おめでしゅ!!今日最初から読み直しました笑最初の方に祖父の件がチラッと出てビックリしました!最初からこの話の伏線を、、、? (2021年4月25日 1時) (レス) id: 5a02811cab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セイ | 作成日時:2021年4月24日 2時