太宰治が入水をする理由。

<入水 ２２> ページ23

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｢もう、太宰さん
探しましたよ｣



私の元に小走りで駆けてくる、が
あと数十糎の処で脚を止める



｢……織田の事、ですね｣



彼女の言葉に自身の肩が上下する
それを見た彼女の目が確信に変わる

ひとつ、深く息を吐いた彼女
その次に、私が予想もしなかった言葉を吐いた



｢太宰さんは、本当に織田作之助が大切なんですね……


あの男に、それ程の価値が有りますか？｣




吃驚する私を前に、彼女はにこりと微笑を浮かべる

今、何て？



｢太宰さんが彼の人に拘わるのか、理解に苦しみます
貴方がこれからの道しるべを任せられる程の男なんですか？｣


｢嗚呼、彼が太宰さんに云った事
大体予想はつきますよ

どうせ、ポートマフィアを抜け｣

｢黙れ｣



お前に、

｢お前に何が判る
……これは私の問題だ。君が口を挟まないでくれ｣



彼女に付き合っていたら思いが揺らぎそうだ
暫くの沈黙が疾走った後、
背を向け、彼女とは逆方向に脚を進める


｢っ待ってください！！｣



呼び止めたのは、また彼女
私の腕を掴み荒々しく声をあげる



｢未だッ、未だ間に合います！
彼の事は忘れて、またポートマフィアに、｣


｢五月蝿いッ｣



ついカッとなり
本能のまま、身体が彼女の腕を振り払う


勢い良く離した為、反動で彼女の身体がふわりと浮き……



｢ッA────｣


必死に彼女の名前を呼び、手を差し出す
そんな私に向かい、彼女は微笑みながら口をぱくぱくと動かす

そんな時間が、長く長く感じた




勢い良く離した為、反動で彼女の身体がふわりと浮き……
私の視界から消えた



彼女が遺した言葉の意味を理解した私は
無意味に伸ばした腕を下ろす



視界から消える寸前の彼女の微笑
それが頭に焼きつき離れない




彼女の跡を追う気にも、逃げる気にもなれず
ただ気力を失い、その場に留まっていた





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