自由謳歌系ライバー【lrn】 (ページ36)

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裏ページ36

いつも通りに配信を終わらせて、防音室を出る。扉を開ければ、待ってましたと言わんばかりに愛犬が尻尾を振りながらやってくる。しゃがんでふわふわの毛を撫でれば、私の顔を何度も舐めてくる。

『本当に可愛いねぇお前は』

愛犬と戯れてリビングに向かうために立ち上がったタイミングで。

ゴトン

ここ最近聞くようになった音にビクリと肩が上がる。音の鳴った玄関を見るのが怖くて早足になってリビングに向かう。愛犬が部屋に入ったのを確認して扉を閉める。

少し前、それこそローレンと一緒に写ってる写真と手紙を送られてから。家のポストに投函されるようになったもの。中身はもうわかりきっている。母親からの手紙だ。

しかも、タチが悪いのが投函されるタイミング。私が配信を終わらせて少ししてからポストに投げ込まれるのだ。配信業のこともバレているのは手紙からわかるが、わざわざ防音室を出たタイミングに当たりをつけて投函してくるから余計に怖い。

手紙が投函される頻度は日に日に増えていた。一度、ローレンと会ってカフェでご飯を食べたときがあったが、それも見事に写真に撮られていた。それからローレンとは、いや事務所以外では他のライバーにも会ってない。誰にも迷惑をかけたくないから。

事務所で会ったマネージャーに「最近コラボとか少ないですけど何かありました？大丈夫ですか？」と声を掛けられる始末。
そろそろ本格的にマズイ、と思ったものの盗撮だけでは弱いし何より警察、もしくは家庭裁判所が絡んでしまう。特に裁判はお金がかかるし、配信と仕事に集中できない。それは嫌だ。

オートロック付きのマンションに住むまでは我慢すればセキュリティは強化されるし、何とかなるかも、とそう思うしかなかった。

・

事務所での打ち合わせが終わり、今日も早足で帰路につく。そう、したかったが。

「A…！ようやく見つけたわ！さぁ、お母さんと一緒に帰りましょ！」

忘れたかった。耳を突き刺すような声、腕を強く掴む力、私を見ているようで見ていない瞳。
こんなことになるなら、打ち合わせオンラインにすればよかった。