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ずっと前を向いていた悟が私の顔を見ながら言った。
五「今日、僕の部屋帰ったけど、掃除も綺麗にされててびっくりした。特級呪術師って忙しいのに僕の部屋の管理までしてくれてたの?」
『うん。私がしたかったの。いつ戻ってくるかわからない悟との思い出を無くしたくなくて。』
私は悟の顔を見ずに血で汚れた編み上げブーツの爪先を見ながら答えた。
五「そっか、」
『うん。』
私の顔を見ていた悟が視線を前に戻して言った。
五「野薔薇達から聞いたよ。恵と悠二を守る為に自分から禪院家の当主になるって言い出したって。」
『あの時の私はそうするしか方法が無かった。強くもなかったし。』
五「悠二を守るのは分かるけどどうして恵も?」
『……恵は、悟が守ってた子だから。意志を継ぎたかったの。上層部のやり方を変えたいっていう夢も、少しでも現実にする為に禪院の当主としての行いも全て恥じないようにしてきた。』
五「…………」
『でも、上層部が私を殺そうとして与えたこの階級は、私自身には重すぎる任務も最初の頃はあった。でも、悔しくて私自身強くなって1年しない内にちゃんと特級呪術師として仕事が出来るようになった。ずっと忙しくて睡眠も食事もまともに摂れない時もあったよ。それでも悟の思い出して辛くなるよりマシだった。』
五「ごめん、」
『悟が謝る事じゃないよ。』
五「……これからどうするの。」
『真希に禪院お抱えの呪術師になってやろうか?って昔言った事があるけど、あれ生きてるのかな?』
五「仕事の事じゃなくてさ、」
『ん?』
五「住むところとか。」
『あ、』
全然考えてなかった。
『誰かの家に泊まらせてもらおうかな。』
五「その誰かってのは僕も含まれてる?」
『……察してよ。』
五「はは、そうだね。」
ズレたサングラスを親指と中指でフレームの端を押し上げて私の手を握り目線を合わせて言った。
五「僕の家、来る?」
さっき泣いてしまって涙腺が少し弱くなったのか、緊張が溶けて気持ちが緩くなったのか。もしくは両方か。けれど今の言葉が凄く懐かしくて私の凍っていた様な心がどんどん溶けて暖かくなっていった。
『うんっ、』
半分泣き声の様な声で握られた手を握り返して昔のように微笑んで返した。
五「待っててくれてありがとう、A。」
『帰ってきてくれてありがとう、悟。』
やっと目が合って、皆が見ているにも気にせずに、どちらからともなくキスをした。
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華渚(プロフ) - もも汰さん» めっちゃ褒めてくれるじゃないですか!!ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!更新頑張ります! (2020年11月28日 8時) (レス) id: c7e672e97b (このIDを非表示/違反報告)
もも汰(プロフ) - 最初から読んでいますがやっぱり面白いです……!!感動する所や笑える所、考えさせられる事がたくさんあるので最近はずっとこの小説読んでいます笑 続編でも更新頑張ってください! (2020年11月28日 7時) (レス) id: 4ac9f60d16 (このIDを非表示/違反報告)
華渚(プロフ) - 鈴さん» 話の量多いですよね、私文章を纏める力がなくてダラダラ書いてしまうんです。ごめんなさい。全部読んで頂けて嬉しい限りです!更新頑張ります! (2020年11月25日 0時) (レス) id: c7e672e97b (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - や、やっと、やっと追いついた!!今ようやく最新話です← ハマったの最近なんですが、もう読むの楽しいです!更新、ゆっくり待ってます。 (2020年11月24日 22時) (レス) id: 55fd3da7df (このIDを非表示/違反報告)
華渚(プロフ) - みんとさん» コメントありがとうございます!今からイチャイチャターンなのでいっぱいニヤニヤして貰えるように頑張ります! (2020年11月24日 3時) (レス) id: 18351af9b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華渚 | 作成日時:2020年11月18日 21時