月とすっぽん

やってきました ページ5

札幌ドームまで足を運ぶとヤスから【STAFF】って書かれた首かけのものを貰う。

「スタッフじゃないが」
「つべこべ言うな、翔平の彼女なんだから毅然としろ！」
「まって、まだ彼女じゃない」
「もう嫁みたいなもんだろうが」
「一気に話飛躍させんなバカ」


ヤスが行く道を後ろからついていく。
ヤスはいつも楽しくなると少し女の子みたいにルンルンと歩く。

彼自身はきっと気が付いていないと思うから何も言わないけれど・・・



「翔平〜〜〜！！！」

練習後の翔平君に駆け寄るヤス。

え、そんな感じで声かけていいんかい！なんて心の中で突っ込みは入れてみる。


「今日はAと一緒に来たんだね」
「ようやく連れてこれた。」
「ヤスくん、えらい」


なんだこの二人のやり取り。
思わず怪訝な目をして二人とみる。

「A来てくれてありがとう。」
「・・・試合前なのにこんな雰囲気で大丈夫？これから本当に試合なんだよね？」
「まあ、大丈夫だよ。」
「・・・ほう・・・。」


ヤスから肩をバンっと叩かれて、「もっと女っぽい相槌すれや！」なんて叱られてしまった。


事前インタビューから帰った監督が目の前を通ると

「翔平今日頼むぞ。」

と意気揚々と声をかけた。


「彼女来てるんで、頑張るしかないっす。」

と真剣な表情で応える姿には思わずわたしもウットリしてしまった。



「翔平が彼女かあ〜おまえも大人になったな！ますます野球楽しくなるぞ〜」

監督はるんるん♪と言わんばかりの楽しいオーラを纏いその場を去った。


「A、今日絶対勝ち投手になるから、ちゃんと見て行ってね。」
「分かった。頑張って。」
「ありがとう。ヤスくんは野球のルールちゃんと教えてあげてね。」
「任せて。フォアボール教える機会作るなよ。」
「うっわ〜。プレッシャーかけてきた。」



ケラケラしながらその場を去ると、私とヤスは二人で用意された席につく。

「はじめて野球見るわ。」
「Aってもしかしてテレビでも見たこと・・・」
「ないわ、ごめん。でもユニフォームの翔平くんは格好良かった。」
「・・・そっか。」
「真顔やめ」

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