月とすっぽん

ありがとうお父さん ページ15

「本日はお時間頂きありがとうございました。Aさんとの結婚の許可を取りに・・・」
「うちの娘で本当にいいのかい・・・」

翔平くんの話を遮り父はこういった。

「うちの娘を嫁に、幸せにしてくれるのかい。」と。



「もちろんです。今日はその約束をしに来ました。」

足腰が悪く寝たきりだった祖母はベッドから降りわたしの元へ駆け寄ると抱きしめてくれた。



みんなが翔平くんを受け入れた瞬間だった。


その後家族と翔平くんと食卓を囲んだ。

にこにこしてわたしの家族と楽しそうに話す翔平くんを見て、とても胸が熱くなった。







私の家族との挨拶を済ませたあの日は一泊をして次の日の午前に家をあとにした。
後日札幌市内で両家の挨拶をすることを簡単に取り決め、帰路についたとき翔平くんはこう話した。


「Aのお父さんにいずれはメジャーリーグに行くから娘さんをアメリカに連れて行くことになるんだっていう話をしたら、お父さんがすてきなことを言ってくれたよ。」
「え、なんて言ってたの？変なこと言ってなかった？」
「Aと翔平くんが二人で決めることに僕たちはとやかく言わないよ。大谷翔平は日本中の期待を背負うエースだし、そのエースの人生に自分の娘が関わるのであれば別にどこにいたって何をしてたっていいんだ。Aのこと頼むよ、人に甘えるのが苦手な女の子だけどな、って。」
「何言ってんだか。おとうさん。」
「Aは愛されて育ったんだね。まだまだ知らないことだらけで、これからが楽しみだな。」


車内はとても明るい雰囲気。

でも知らなかった。彼が結婚をするっていうことが、どれほど世間を動かすことか。

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