月とすっぽん

同姓同名？ ページ1

はじめはそう意識していた訳じゃなかった。

「大谷翔平」

彼が日本国内においてどれほどの知名度か知らないわけじゃなかった。




「お前のこと紹介したい人がいんだけどさぁ」

男友達からそういわれて何気なく始まったやり取りだった。



―――大谷翔平といいます。


まさか。

同姓同名なだけでしょう。



やり取りを続けると

―――野球好きですか？




どうしたらいいか分からなくて興味がないです、と返してしまった。

「絶対好きにさせます」



『野球を』という意味だと分かっていても心臓はときめいていた。









「ねぇ、翔平とどう？」

私に『大谷翔平』を紹介したやつと仕事帰りに一杯交わす。


「まさかと思うけど、あの・・・」
「そうだよ。有名のね。」
「まって、なんであんた知り合いなのなんで私に紹介したの」
「いや、質問攻めしないで！」


目の前にいるヤスこと大野恭崇はイケメンだ。
すらっとしてるし、しゅっとしている。(・・・語彙力はない)

でも他人に興味のない超がつくドライ人間で、引っ込み思案。

こいつには私しか友達がいないと思っていた。


(という私もこいつくらいしか友達がいない)


某高級ブランドの販売員をしているヤスは有名人とかの知り合いが多いことを知っていた。

仕事人間な私はひたすらに会社でパソコンをカタカタしているだけだし
芸能人や有名人に滅法弱かった。


「だいぶ前に買い物にきたんだよ。」
「大谷翔平が？」
「うん。」
「で？」
「友達になった」
「んな話あるかいな。」
「でさー、女の子紹介してよ。ミーハーじゃない子でって」
「ほう」
「おまえしかいないじゃん？」
「いや、ほかにもいるだろうが。お店に来るミホちゃんとかあんた仲良いじゃん」
「てめーあんなもんミーハーでしかないだろうが」

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