43 （Ｆside） ページ10
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7月、コンサートツアーが始まった。
目標にしていたドームツアー。
俺達は皆、高揚していた。
様々な症状に苦しみ、不安に襲われながらも、黙々とリハーサルをこなしていた宏光。
コンサートに懸ける思いは、俺達以上だろう。
ツアーに合わせて予定していた宏光の放射線治療も始まった。
コンサート初日の朝、東京で治療を受けて現地入りする。
「大丈夫か？」
「うん。ちょっとだるいけどね…」
恐れていた副作用は、覚悟していたより酷いものではなかったが、だるさや疲労感が宏光を苦しめているようだった。
できるだけ、体を休められる様にいつも使用しているブランケットと枕を持ち込んだ。
「ほら、まだリハまで時間あるから、横になってろよ。」
「え？いいよ。皆もいるし…」
宏光の病気の事は、メンバーと家族、そして事務所のほんの一握りのスタッフしかしらない。
「あれ？北山さん、また寝てる。…調子悪いんですか？」
心配そうに声を掛けてくれるスタッフやジュニアもいたけど…
「いや、大丈夫。今、ドラマやってるでしょ？寝不足みたい。」
「あ、そっか。大変ですね。あれ？でも、玉森さんもそうでしょ？」
「俺は若いから大丈夫。アラサーのミツと一緒にしないで(笑)」
時期が時期だけに、メンバーのフォローを怪しむ人はいなかった。
「本番で辛くなったら困るだろ？無理すんな。」
「うん…」
抵抗していても体は正直だ。
無理矢理でも横にならせれば、すぐに寝息を立て始める。
リハも本番もメンバー全員で宏光に注意を払い、無理はさせないようにした。
「頭、痛くないか？手、しびれない？」
「うん。大丈夫。放射線治療、すごいね！」
幸い病気の症状は出ていないみたいだ。
「なんかあったらすぐ言ってね。」
メンバーの声にも笑顔で応えている。
もし、神様がいるなら
どうかこのまま無事に…
宏光を守って…
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作者名：MISA
| 作成日時：2014年6月3日 22時
