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60 (Fside) ページ27

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「はい。体温計。」




出掛ける前の体調チェック。




「ほ〜い。」




宏光が高熱を出して以来、俺達の間ではもう習慣になりつつあった。

最近では、他のメンバーも仕事前に体調チェックをしてくれている。

「過保護すぎる!」と最初、宏光は嫌がっていたが、「ミツはすぐ無理して困らせる!」とメンバー全員が宏光に言い寄ってから、素直に体調を伝えてくれるようになった。







今日は新曲披露の生放送。

マンションを出る前に宏光に体温を測らせる。







「何度〜?」

「36度5分〜」

「ん、平熱だな。頭は痛くない?気分は悪くない?」

「うん。大丈夫。今日は絶好調!生放送日和だね!」






宏光の笑顔に、俺も安心して局へと向かった。

楽屋に着くとメンバーはもう揃っていて






「おはよ〜。」

「おはよ。ミツ、今日は体調どう?」

「さっき散々藤ヶ谷にチェックされたよ。今日は絶好調。」





ピースサインの宏光に、皆が笑顔になる。

歌のリハーサルの後、休憩をはさんでトークのリハーサル。

一通りの打ち合わせを終えて、後は本番を待つのみ。

楽屋でそれぞれが寛いでいる時だった。






「……ちょっと、トイレ…」






ソファに横にならせていた宏光が、起き上がりドアに向かって歩き出した。

フラフラした足取り。

宏光の様子がおかしい。






「北山?…大丈夫か?」






思わず駆け寄り宏光の腕を取った。






「た、い、すけ…」






フラリと傾く体。

受け止めた体は異常な熱を帯びていた。






「お前、めちゃくちゃ熱いじゃん!」






驚いたメンバーが一斉に駆け寄る。







「なんで言わねぇんだよっ!」

「大丈夫、だって…。」

「無理すんなって言っただろ。」

「ごめん…でも、大丈夫、だから…」

「ミツ、いつから調子悪かったの?」






渉の質問に口を閉ざした宏光。






「お前まさか…朝からずっと無理してたんじゃ…」

「藤ヶ谷騙せるなんて、俺の演技も……大したもん、だろ…?」

「何やってんだよ…」






口角を上げてフッと笑った宏光に、俺はもう溜め息すら出なかった。





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作者名:MISA | 作成日時:2014年6月3日 22時

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