51 （Kiside） ページ18
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気付いたら、海まで来ていた。
周りは真っ暗で、水平線は空に交じってどこまでが海なのか分からなくなっていた。
夏とはいえ、深夜の海。
見渡しても人は誰もいない。
ここなら…
浜辺に１人座り込み、ずっと波を見ていた。
暗闇に動く白い波が、記憶を運んでくるように俺は昔の事を思い出していた。
思い出される記憶の中には、どれも太輔がいて
太輔の怒った顔
笑った顔
泣いた顔
拗ねた顔…
全部俺の好きな太輔の顔だった。
俺が死んだら太輔は泣いてくれるかな
いや、もしかしたらすごい勢いで怒るかな
……ごめんな、いっぱい苦しめて…
俺も…苦しいよ…
もう…どうしていいか分からないんだ
どうしようもなくて俯いた先に、放り投げた鞄から投げ出されたスマホが目に入った。
そっと砂浜から拾い上げて、電源を入れた。
待ち受けには、太輔がふざけて設定した写真。
リハーサル中のコンサート会場でメンバーが肩を組み合って幸せそうに笑っていた。
そっと皆の笑顔を指でなぞってみる。
涙が溢れて止まらなかった。
「ごめんな、皆……大好きだったよ…」
呟いた時、太輔からの着信が入った。
出るつもりはない。
画面に表示された太輔の名前をじっと見つめながら電話が切れるのを待った。
コールは数回鳴らされた後、一度切れ、またすぐに同じように鳴らされた。
それを機に、次々に鳴らされるメンバーからの電話。
着信履歴はあっという間にメンバーの名前でいっぱいになった。
同時に何通も送られてくるメール。
全てメンバーからだ。
『ミツ！どこにいるの？』
『お願いだから声聞かせて！』
『ミツ、皆心配してる。帰って来て…』
吹き込まれた留守電にもメンバーの声が連なっていく。
「ごめん…ごめん…皆…」
膝を抱えて自分自身を抱きしめた時、聞こえた声。
『宏光…聞こえるか？今どこにいる？………会いたいよ。』
「太輔……」
再び鳴り始めた着信音。
もう一度…
太輔の声が聞きたくて、
震える手で握り締めたスマホをゆっくりと耳に当てた。
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作者名：MISA
| 作成日時：2014年6月3日 22時
