50 （Fside） ページ17
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渉の運転する車で心当たりを回って行く。
２人で訪れた店や、駅前、テレビ局…、思いついた場所は全て回った。
移動中も助手席で、俺はひたすら宏光に電話を掛け続けたが、何度鳴らしても宏光からの応答はなかった。
探す当てがなくなり、道路の脇に止めた車の中で、渉と二人途方に暮れてしまった。
「そっちはどう？」
渉が宮田やニカ達に連絡を入れていた。
「あっちもまだ見つからないって。」
探し始めてもう1時間が経とうとしている。
渉も焦りを隠せなくなっていた。
家路を急ぐ人達も段々と数を減らし、街は少しずつ深夜の空気に包まれていく。
「どこにいるんだよっ！宏光っ…」
握りしめた拳で、ガンッとダッシュボードを叩きつけた。
静まり返った車の中で、転がり落ちたスマホが妖しく光っていた。
「……太輔……ごめんな。」
顔を上げると、渉が涙を浮かべて俺を見ていた。
「ミツな、俺に言ったんだよ。太輔を頼むって。」
「…何…？」
「だんだん調子悪くなって、太輔が落ち込んでることミツは気付いてた。自分の前では無理してるんじゃないかって……太輔の事心配してた。」
涙が溢れた。
「俺…太輔とミツがお互いの事、気遣い合って無理してること気付いてたのに、何もしてやれなかった。
もっとちゃんと…俺が二人の事見てやれば…」
涙で震える渉の肩をそっと包んだ。
「そんなことない。渉には、俺も宏光も随分助けられてるんだ。俺達…渉には甘えられたから。
でもそれが逆に渉を苦しめたね。ごめん…」
泣きじゃくりながら、首を振る渉。
「ありがとな、渉。…もう俺、泣かないよ。宏光の全部を受け止める。俺が宏光を守るから。」
未だ宏光からの着信のないスマホを拾い上げ、祈りを込めてもう一度宏光に電話を掛けた。
数回のコールの後、繋がる留守番電話。
すぅ…と息を吸い込み、静かに語りかけた。
「宏光…聞こえるか？今どこにいる？………会いたいよ。」
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作者名：MISA
| 作成日時：2014年6月3日 22時
