家族 ページ6
「そうだ。俺、今週帰る」
寮生は基本的に長期休暇以外は寮で生活をしている。しかし休日などは外泊届を出すことで家に帰れたり、どこかに泊まりに行けたりするのだった。
学校側はできるだけ家に帰り家族との時間を、と口にしているが自由を手に入れた高校生がなかなか帰るわけがない。
「え」
シンヤとシュンタもその高校生のうちの1人で、休日はどちらかの部屋でゆったり過ごしたり出かけたりなどしている。
今週は何をするのだろう、という思いで毎日を過ごしていたシュンタはつい間抜けな声を出してしまった。
「他県に住んでる叔父さんが遊びにくるみたいで、一家揃ってご飯食べに行くんだってさ」
「あー……それは行ったほうがいいな」
「最近全然帰ってなかったし、たまには顔見せろってお母さんに言われた」
はは、とシンヤは笑う。寮で暮らしているからあまり実感が湧かなかったがシュンタに家族がいるように、シンヤにも家族がいるのだ。
「シンヤの家族ってどんな人？」
「どんな？んー、お母さんが元気で強くて、お父さんが尻に敷かれてる感じ。弟はとにかく生意気」
「なんか、想像できるわ。楽しそう」
「まあ飽きはしないな。シュンタんとこは？」
「俺は」とベッドに寝転んでいたシュンタは体を起こした。ベッドに背もたれを預けカーペットの上にあぐらをかいているシンヤの横へするりと移動する。
「母さんは能天気っていうかふわふわしてる。で、父さんは真面目で堅いんだけど母さんに振り回されてて面白い」
「ははっ、そっちも面白そうじゃん。一人っ子だっけ」
「そう」
楽しげに笑いシンヤはスマホを見せてきた。画面には弟であろう子がサッカーのユニフォームを着てピースサインをしている写真が写っている。
「母さんたちにシュンタ会わせたいな。絶対面白そうだわ。今度うち泊まりにくるか？」
「え！か、考えとく」
シュンタは体を傾けシンヤに体重を預ける。そんなに親密になったら家族みたいだな、となんだかおかしな考えが頭によぎったので目を閉じて忘れることにした。
しかし、家で家族と暮らしている時と同じくらいシンヤと一緒にいる時に安心できるのは紛れもない事実だった。
「……俺も今週帰ろうかな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ずずずん | 作成日時：2022年8月6日 19時
