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「ヤダね」
五条のその返答に夜蛾は大して驚くことなく、「そうか」と言った。
夜蛾が自分たちの意見を随分と素直に聞き入れたので逆に拍子抜けしたのは彼らの方であった。
夜蛾とて、意味も無くヒーローを目指したわけではなかった。それは今やヒーローとして名を馳せる虎杖たちも例外ではない。
だって自分たちは呪術師なのだから。
明るい光を歩くよりも、暗い闇を歩く方が心地良かった。
彼らは命の重さをどのヒーローよりも理解していた。
目の前で失われた命は、数え切れないほどあったのだ。救おうとして手を伸ばしたはずが、守ることすらも出来ないままその命を取り零してしまう。それが当たり前だった。
故に、彼らはヒーローに向かなかった。
この世界は以前と違い、失われる命はそう多くはない。
でも、例えそうだったとしても結局は見棄てなければならないのだ。人々を守ろうだなんて馬鹿げている。そんなの、出来るはずがない。
そう、彼らはもう既に救えない命があることを知ってしまっていた。
ヒーローを、英雄を、夢を。
それらを語ろうにも、彼らは遅すぎたのだ。
なら何故、夜蛾や虎杖はヒーローをしているのか。
その理由は簡単だった。
「ヒーロー、それが我々に向いていないことは十分わかっているだろう。それはもちろん、七海達も理解している」
「…でも、七海も灰原もヒーロー科にいる」
「悟の言う通りだ。彼らはヒーローをしている」
「では、何故ですか」
「…目的はみな同じ」
────仲間に会うためだ。
かつて呪術師として前線で戦ったもの、そのサポートとして駆け回った補助監督。夜蛾は彼らを見つけ出し、自分の元へと置いていたのだ。
その場所こそが夜蛾のヒーロー事務所だった。
この世界の人々はヒーローに絶対的な信頼を寄せていた。きっとヒーローが助けてくれる。誰しもがそう願っていたし、そう望んでいた。
まるで、呪いのようだと夜蛾は思っていた。それは呪いを齧った者からすれば些か生きにくい世の中でもあった。
だから夜蛾は、虎杖らはヒーローとして日本中を駆け巡るついでに仲間を探していたのだ。
その真意を聞いた夏油は居た堪れない気持ちになった。
人々を驚異から守り、救う。それに若干の嫌悪感を抱いていたのは夏油のみでは無いことを知ってしまった。
それなのに、何故、そうだとしても、何故、彼らはヒーローをするのか。
夏油にとってそれは理解し難い物であった。
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あお - 間の開け方とか言葉選びとかすごい良かったです！！ (2022年8月28日 20時) (
レス) @page18 id: c1da01ed72 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 呪術師側のイカれ具合とか、ヒーローに対する嫌悪とか、全て大好きです。 (2022年1月2日 15時) (レス) @page50 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
あかし - あくまで私個人の感想です。書き方やオチ希望してる方がいますがこれは作者様の作品です。書き方も展開も終わり方も全て作者様の自由です。私はこのままの作品が好きですし、作者様の自由にして下さい。言葉選び、文脈全てが大人で素敵です。これからも応援しています。 (2021年8月7日 14時) (レス) id: 9951821a6a (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年2月11日 11時
