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家入と夏油の後ろを、彼らから大分間隔をあけて七海は八雲と歩いていた。
七海の問いに八雲は、少し困ったように笑った。
自分は五条によって殺されたと、夏油本人はそう言っていた。
八雲は考えた。例えもし、八雲がその時生きていたとしても夏油は五条に殺されていただろう。
いつしかの、五条の言葉が八雲の頭に響いた。
「もし、また、あの時と同じようになってしまったら、どうするおつもりですか」
夏油が再び敵となる可能性は十分にあるのだと、こちら側にいる保証など最早どこにも無いのだと、七海は言った。
八雲は、夏油の離反したその先を知らなかった。
その先の話を五条や家入に聞いたことも無ければ、勿論夏油にも聞いたことは無かった。
八雲には七海の言うあの時、がどの時なのかよく分からなかった。けど、だけど。
「…悟がね、自分が救えるのは救われる準備がある奴だけだって言ってたの」
「…はぁ」
「私はエゴイストなんだよね。ぶっちゃけ傑と悟がまた殺し合ったとして、私にはきっと何の害もない」
七海は静かに驚いていた。
七海から見た八雲という人間は、到底エゴイストとは遠い存在だった。どちらかと言えば、他者のために動ける人間だと思っていた。
灰原の死に、夏油の離反に八雲が涙を流していたことは知っていた。
優しい人なのだと、七海は思っていた。
「まあ、これは傑と悟が私の友人じゃない場合の話だけどね」
「…と言うと？」
「私は一度懐に入れた、認めた人間は意地でも守り抜きたい主義なんだ。それは、私自身の利益でもある」
「それは、」
「逆に、認めてない人間はどこで野垂れ死んだとしても私には関係がないと言い切れる」
だってそれは私の損害にはならないもの。
七海の言葉を遮り、八雲はそう言って笑った。
七海はどこかで安心する自分が居た。
七海にとって彼女は、本当に優しい女性だった。
呪術師らしいイカれ具合を七海は彼女から見つけることは出来なかった。
なるほど、と七海は納得した。
八雲は自分を認めてくれていた。八雲にとって守るべき対象は"友人"であった。
八雲Aという人間は、優しい人間では無かったのだ。
呪術師は目の前にある命すらも救えないことが多い。
八雲は、救えない命を見捨てることが出来た。その姿は家入にとっては頼れる存在であり、五条にとっては目指すべき姿であり、夏油にとっては、とても不愉快なものであった。
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あお - 間の開け方とか言葉選びとかすごい良かったです！！ (2022年8月28日 20時) (
レス) @page18 id: c1da01ed72 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 呪術師側のイカれ具合とか、ヒーローに対する嫌悪とか、全て大好きです。 (2022年1月2日 15時) (レス) @page50 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
あかし - あくまで私個人の感想です。書き方やオチ希望してる方がいますがこれは作者様の作品です。書き方も展開も終わり方も全て作者様の自由です。私はこのままの作品が好きですし、作者様の自由にして下さい。言葉選び、文脈全てが大人で素敵です。これからも応援しています。 (2021年8月7日 14時) (レス) id: 9951821a6a (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年2月11日 11時
