----番外編 翠斎槻の痕跡---- 弌 ページ3
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「_____________翠 斎槻が死んだ」
そう琉架から連絡を受けたのも、もう10ヶ月も前。
崩れた場所の改修が殆ど終わり新しくなったレブル拠点。そんな中、浅葱 翼は医務室にいた。
相変わらずの悪い目つきでパソコンと睨み合う彼は、27歳。じいさんと言われても不思議じゃねえなと思い始めたこの頃。「淋あいつ、悔しさで口噛む癖本当やめろよな……雑菌とか入ったりしたらどうすんだバカ」と一人ごちりながらも淋の体の事を思う彼は矢張り優しい。
ふと、優しい緑色の髪の彼を思い出して手を止める。ちょうど長時間仕事机と向き合っているから、疲労感を感じてきた頃だ。一度伸びをして、椅子に深く腰掛けてから静かに記憶の蓋を開けた。
彼___翠 斎槻と会ったのは、未だ組織とも言えないほどの数しか居なかった、最初期のレブルに入って数ヶ月後だった。風の噂で聞いていた、『ウチの首領に挑んだ無謀な新入り』として彼を知った。相当痛めつけられたようだから、きっと二度は無いだろうと翼も思っていた。だからいつも通りの仕事をこなし、いつも通りの日々を送っていた。
翌日、業務の報告をしに首領の部屋へ行こうとした時。非人道的な孤児院で鍛えられた聴覚で捉えた、静かだが確かに聞こえる、何かを引きずるような音。自分の歩いてきた方と逆の方から聞こえる。重い荷物でも運んでいるのかと思い、音の聞こえる方に目を向けた。…………翼は目を見開いた。信じられないものを見た、という目。
_________『首領に挑んだ無謀な新入り』。
突如頭をよぎったその言葉は、翼を彼の方へと本能的に向かわせた。案の定、彼は満身創痍だった。壁を伝って漸く歩くことができるような重症。
恐らくミルクの能力の仕業であろう切り傷のせいで体の至る所から血を流していて、呼吸も荒い。……よく、生きていたなと思えるほどの重体。
「……ひっでぇ傷だな。俺が見てやる。医務室に来い」
声をかけ、手を取り医務室の方向へと向かおうとした。
すると満身創痍の彼はバッと手を払いのけ、言った。どこにそんな力があったのか。
「……る、さい…………邪魔を、する……な……。」
その目には確かな意思があった。しかし良いものではなく、それは狂気の宿す意思だと感じた翼は、ミルクを殺'す気なのかと勘付いた。組織のトップを殺'されちゃ敵わない。さて、どう手を打つかと考え始めた時、ふらりと彼がよろけた。地面に向かって真っ直ぐに倒れた。寸前の所で受け止め、何も言わぬ彼を運んだ。
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松宮カナメ(プロフ) - くろせさん» わあ!!ほんとボロクソ言ってすみません!!!ありがとうございます!! (2019年5月7日 22時) (レス) id: eb873f1f0d (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - どうも小学生から中学生になった唐揚げが嫁な奴の親です← 剣士使って頂いてありがとうございます!更新、楽しみにしてますね! (2019年5月7日 21時) (レス) id: c00e49c93d (このIDを非表示/違反報告)
松宮カナメ(プロフ) - 十二月三十一日さん» ワァァ、ありがとうございます!!いつか書きたかった話なのですごく嬉しいです……!こちらこそステキなキャラクターをありがとうございます!ぜひ書かせていただきます! (2019年3月16日 22時) (レス) id: eb873f1f0d (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - お久しぶりですね。ウチの斎槻を使って下さり有難う御座います。久し振りに巡回していたら、まさかの番外編に思わずにやけてしまいました。理想的過ぎる展開でびっくりしました。未だに感激しております。次のお話、楽しみにしております。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: 825c15ca49 (このIDを非表示/違反報告)
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