【CS集】Outcast (ページ21)

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他人がドン引くレベルの高所恐怖症である。どのくらいかと言うと、箒に乗って飛ぶのに、毎回三回の深呼吸が必要なくらいである。今は深呼吸で済んでいるが、低学年のときは魔法の技術もままならず、毎回教員の方に支えて貰っていた。当時の自分を恥じて、寝る間を惜しんで練習した結果の、深呼吸三回である。見守っててあげて欲しい。

手を伸ばせども鎮まらぬ、ゆらゆらと燃える炎。
彼の持つ最大のトラウマで、抱く絶望の理由だ。
彼は、広大な晴明の国の中でも高名な多神教の神職の家に生まれた子どもであり、その権威である。歴史あるシシバ家は、晴明の国の発展と共に変化をしてきた。最たる例が、「科学派閥」と「宗教派閥」の存在である。約18年前、次に生まれた子どもを当主とする方針を固めたその時、双子の一片として生まれたのが彼だ。
彼は科学派閥に引き取られ、瞬く間に将来有望な研究者として名を馳せた。それもそのはず、当時彼は夢中で研究をしていた。友達も少なかったが、止めることは決してしなかった。何故か。ーー答える相手がいたためだ。彼は、その姿も見えない問いの持ち主を、「神様」と呼んでいた。神様は彼に、数多くの問いを与え、誰よりも近くで彼の思考を見守った。見えない神様と孤独に話す彼は、異端がられながらも、年相応に可愛がられた。

しかし、ある研究が彼の運命を変える。
幼少の彼が成し遂げた有名な研究に、ある合成燃料の発明がある。石油に近いその合成燃料は、発明から瞬く間に話題を呼んだ。その合成燃料は高価であるが、天然の石油よりも純度が高い。少々の魔力と素材さえ集まれば、永久精製機となる。つまりこの発明は、極めて軍需産業に適したものだった。

キケイ・シシバの名前は、全世界に注目された。
その時からだ。降り注ぐように聞こえていた神様からの問いが、一切聞こえなくなったのは。
代わりに、好奇心や悪意をひた隠しにした大人たちが、キケイのもとへ訪ねて来るようになった。知らない人からの交渉ごとが増えた。周囲の全員が、味方のように振る舞っている、敵に見えた。
彼は気丈であった。自分の発明とその時間に、誇りを持っていたからだ。誠実さをもって、全ての人に接していた。たとえ、友達(神様)が居なくなっても、焦りはしたが変わらなかった。