【ひのにて】UNDEFINED【CS集】 (ページ3)

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【「過去」と「今」】

キールの家系は、Glimで代々続く、錬金術の研究家一族である。ヴァンパイアのことを「人間の生み出した誇るべき傑作品」と称して徹底的な管理下に置き、根拠のないバディ契約をヴァンパイアと結ばせてきた、前時代的な家。その家の長男として生まれた彼には、求められる使命があった。
「コロレド家のヴァンパイアの“バディ”を務める」、というものである。
無論、この中で示されるバディは遺伝子に依る運命のことでは無い。Glimに負の遺産として残された、人間がヴァンパイアを監視する契約のことである。前時代的なカリストラトフ家はこれを伝統として、コロレド家に無理な契約を強いてきた。

しかし、キールはそれを黙って受け入れるほど、利口な子どもではなかった。若年らしからぬ鋭い賢さと、人の顔色を窺い知る才能が、すでに目覚めていた。
そう。齢十三にして、彼は自分の家が大嫌いだったのである。
彼の芯にある横暴な奇想天外さは、この頃目覚めたと言えるだろう。

紹介された、自らのバディ相手。その彼に、キールは─────ゆっくりと、仰々しく、跪いた。忠義を誓う騎士のよう。プロポーズをする少年のよう。
純心を模した真っ赤な嘘が、微笑みののちに開花した。
「主人様(・・・)。これからあなたのお世話を担当いたします。どうぞよろしく」
当然、実家は大荒れである。コロレド家のヴァンパイアを、自分より「上位」に据える。それはすなわち、カリストラトフ家にとって敗北を意味するものであった。
しかし、キールは現在までそれを、「いいだろ。管理してんだからさ」と相手にしていない。それには、気まぐれが長続きしたこと、それ以外の要因も、十二分にあるようだ。

5年前のGlimに起こった大革命においても、実家の怒り心頭の様子とは対照的に、とても好印象を抱いている。これは偏に、最新の研究に熱心な実家を否定できるからである。
この通り、彼のその頑固さ・利己主義には、実家への徹底した嫌悪が由来している。実家を否定できるなら、どんなことでもする。根っこのプライドの高さは完全に血縁由来だが、革命ごとや鮮烈なもの、型破りな新しいものに目がないのはそのためである。負けず嫌いゆえの温故知新、それこそが、彼の食えない性格を最大限に表しているものだといえるだろう。