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「ジョゼ。今年の監督生のメンバー、聞いたか?」
「ええ。例年通り、とても知的な方々が揃っていらっしゃいますわね。これからの一年も楽しみですわ」
「知的なのは否定できないけれど……個性的、がより正確だろうな」
苦笑しながらそう口にすると、再びジョゼフィーヌはくすりと笑った。
到着すると、まばらではあるが、既に皆が集合し始めていた。
それぞれが談笑しながら、新入生の姿を見ている。新しい後輩、同じ志を抱く萌芽の賢人たちが集うその講堂に視線を向けながら、春の風の訪れを感じ取っていた。
「今の彼女、どこに行くと思う? 俺はコーリデロスだと思うが」
「あら、そう?意外にああいう子がウチに来るんじゃないかしら。……ほら、当たった!ふうん、なんだか仲良くなれそうね」
「ふふ、可憐な乙女たちが集う荘厳な儀式……心が躍ってしまうね。そうだろう、ロザーナ?」
「そうだな、アイラー!今日は美しい日だ、そう宿星が告げている。そして、それは当然彼らにとっても、私たちにとってもだ」
「あー……だる。なんで、おれが監督生なんだ。薄々予感はしてたけどまさか当たるとか……うわ新入生怖っ、こっち見んな」
「えっと、まずは…寮の案内とか、タールフェルトの由来から説明して、次に…あ、談話室の本の扱いのことも話さなきゃ!あぁ、確認しててよかった……」
「ヘイデン!今日からまた、忙しくなるな。けれど、楽しみでもある。そうだろう?」
「ああ。……そうだな」
__ヘイデンは、回想する。
あの日。彼が、泣きながら地面に座り込んだ日。守ってやらなければ、壊さないように大事にしなければ。そう気づいて誓った、あの日。それから季節はぐるりと二周して、同じような木漏れ日と彼の涙がぽうっと光る、昼下がりを浮かばせた。
ライノアが退院することになって、学区も離れているため会うこともまばらになるだろうと予想された、別れの日だ。
「ねえリュカ、約束だよ、また一緒に遊ぼうね。今度はきっと、お外で一緒にね」
小さくて暖かいその手に、やわらかく握られる。別れは寂しかった。名残惜しくなってしまう弱い気持ちも、本物だった。
だけれど。そうして涙しているヴェルの姿を見ていると、自分はしっかりしなければ、と思う心が働いた。いつでも彼の涙を拭ってやるのは自分の役割だったし、他の大きな障壁から守るのは自分の使命だった。この時に於いても、それは例外でない。
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