35. リモート会議Take2 ページ42
「まず頼みたいのは鬱とショッピ、お前らの現状報告や。今傍におるんやろ？ゾム……の、」
”有力候補”。トントンはそう付け加える。
”ゾム”という言葉に、ざわざわと驚きと疑念の入り交じった声があがる。
《候補やなくて、今回のはマジのマジで本物なんよ！》
幹部達の未だ信じきれていないという反応に、鬱は抗議した。
「(そうは言われてもなぁ)」
と、トントンは頭をかく。
今まで彼らが探し続けていた”ゾム”に近しい人物を見つけた経験はそう少なくない。
姿が似ている者、強い力を持つ者、”ゾム”を自称する者。
それらが本物だったか偽物だったかは、ご覧の通りだ。
「昨日2人から聞いた情報で信じられるんは、ヒト族で、姿と声が瓜二つ、他種族と話せる。この3つや」
「他種族と話せる人間って初めてのケースやないですか？」
水色の髪で瓶底メガネをかけた男が、意見を述べる。
長机の末席に座る彼は新人であるものの、他の幹部達に負けず劣らず発言できる度胸をもっている。
「でもゾムって異種族やろ、一応」
「その手の情報は兄さんとかペ神に聞かへんとなあ…」
「で話逸れたけど、体調が悪いと身の回りで変なことが起きる、は却下。曖昧すぎて意味が分からへん」
《でもホンマにあったんすよ》
今度はショッピがそれに対抗する。
《数日前に日本の一部地域で降ったゲリラ豪雨、あれあの人の仕業です。彼が熱で倒れた瞬間雨が止───》
「ショッピ君」
弁論を遮って声を発したのは、ミルクティー色の七三分けの髪で茶色のチョッキを着た男。
「悪いけどね、私は事実が知りたいんです。憶測ではなくて」
反論ではあるものの、彼の少し不気味な、しかし穏やかな白い瞳は真剣そのものであった。
「今までの捜索の結果は散々やけど、もし君らの言うことがホンマやったら、これは一大事や」
「彼、今人魚の姿なんでしょう」
彼は、ゾムさんはなんの種族でしたか。
チョッキの男のこの質問に、鬱とショッピはニヤリと笑う。
元はと言えば、今回はそれの報告が目的だったのだ。
2人の言う”ゾム”が本物かどうかを見分ける方法で、簡単なものがある。
生前の彼の人魚の姿は、他と見間違えようがない程に珍しいのだ。
もし同じであるのならば、同一人物と見ていいだろう。
「まさかホホジロザメとか言わへんよな？」
小柄な男の質問に、ショッピは答える。
「当然でしょ。あの人は────」
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
