33.肉食系男子 ページ40
夕食には海底で大人気(大先生談)のレストランに連れて行ってもらった。
施設内は天井が広く、上まで泳ぐと水面にテーブルが浮いていた。
どうやらここは風呂のように下半身が水に浸かった状態で料理を食べるという形式らしい。確かに水中やと食べカスが舞いそうやしな。
人魚の体は肺呼吸もエラ呼吸もできるらしく、空気中の活動も何ら不便はなかった。
強いてあげるなら、俺みたいな全身が魚に近い形態の奴は体が乾きやすいというくらいだ。ショッピくんが羨ましい。
「ゾムさん大食いって聞いとるからな、たらふく食ってええで。全部奢りや」
「さっすが鬱兄さん、太っ腹やなぁ！」
「いやお前は自分で払え」
猫亀コンビの漫才のような会話をBGMに、魚を貪る。
人間界でしか生きてきたことのない俺にとって、種族によって主食が違うというのは中々新鮮だった。
大先生は基本的に野菜を食べ、ショッピくんは肉と野菜をバランス良く、俺は肉、肉、肉。
半人半魚だから一応雑食なのに、なぜか全く野菜に目がいかない。サメの本能恐るべし。
そういえば、今日一日街を探索して気になったことがある。
「……なんかさ」「どしたん」
「大先生とショッピくんって、結構有名人？」
2人の食事の手が止まる。図星か。
この人ら、街中で声掛けられたり注目されたりと中々に目立ってたからかなり恥ずかしかった。
この街の市長みたいな存在の大先生と、その同僚のショッピくん。有名じゃない方がおかしいか。
そのことを話題に出すと、2人は何やら複雑そうな表情をしながら話し出した。
「有名人、ってのはあながち間違いじゃないんすけど…」
「え、もしかして気付いてへんかった？皆君のこと見とったんやで、ゾムさん」
「はぇ？？」
今度は俺が手を止める番になった。
「ホホジロザメってこういう小魚とかも多い都会じゃビビられとってな、それは水生族とかみたいな種族でも同じやねん」
もちろん人魚族も然り、と大先生は付け足す。
え、俺ビビられてたん？
「っていうのは冗談で」
「は？？」
「実はね、昔そのふ────」
そこまで喋ったところで、突然大先生とショッピくんの会話が止まる。
どうやら2人同時に電話が掛かってきたらしい。会社からだろうか。
「ショッピくんも電話持ってたん？」
「ええ、あんたが寝てる間に戻ってたんで。じゃ、一旦席外します」
そうして彼らは水中に潜り、入口のある底へ消えていった。
一体昔に何があったんやろか。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
