32.JAWS！！ ページ39
「大先生ー」「んー？」
「俺の体、もうちょっとマシなのにできひんかな」
ショッピングモールのブティックに入り、そのまま試着室に入れられる。
外から次々と投げ込まれてくる服を急いで着ながら、俺は一言愚痴を零した。
なぜならこの体、とにかく服を着るのが不便なのだ。
「あんな、俺の腕と背中にヒレついてるせいで全然袖通せへんねん」
それに文句の付け所は沢山ある。
まずは肌の色。もともと俺は白い方やったけどもうその比じゃないくらい顔が白い。あと腹から下も白い。
それに比べて背中側と腕は灰色で髪色も茶髪から濃い灰色に変わっている。いかにも人外って感じだった。
あと腕に一つずつと背中に大きいのが一つ、尖ったヒレが突き出ている。これが一番邪魔や。
「ええやん、かっこええで」
それでもこんな人外寄りなのは恥ずかしい。
ショッピくんは俺みたいに魚っぽくはなく、アニメとかでよく見る人間の上半身に魚の下半身って感じだった。
「俺もああいうのがええねん」
「うーん……それはちょっと難しいわ」
なんで、と聞くとこれまたうーんと返される。
「この変身薬な、変身する大まかな種族は選べても、どんな見た目になるかはその人次第やねん」
変身薬は”その人がその種族として生まれた時”の姿を一時的に再現するもの。
つまり、とある2人が同じ｢人魚になる薬｣を飲んでも、一方はマグロの人魚、もう一方はクジラの人魚になる可能性も大いに有り得るのだとか。
だから俺の場合は、これ…つまりホホジロザメが本来の種族だということ。
これが元の姿やから、変えるのは無理ってことか。
「サメなんて強種族になれる人そうそういませんよ」
｢せやぞ、めちゃめちゃ強いんやからな！」
「俺なんてガーディアンっす、ほら棘出るし」
「いやそれもそうそうおらん…ってビーム出すな！！」
カーテンの外から大先生の悲鳴とショッピくんの笑い声が聞こえてくる。
ショッピくんも不本意そうやったけど、なんやかんや楽しそう。
「…かっこええかな、コレ」
くるりとその場で一周し、自分の姿をもう一度見る。
なら別に、このままでええか。
この後試着に飽きた俺の為に、大先生は俺の体に合わせて作った特注の緑パーカーをプレゼントしてくれた。
これは予め用意しておいたものらしい。
…先に言え。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
