26.お静かに ページ33
「いやー悪いね、家入れてもろて。探し物よかったん？」
さっきからしきりに喋りかけてくるの、うるさくて叶わへんからちょっと黙っててほしい。
「カメ、静かにしといて」
「あ、うす。…………ん？」
カメは素直に黙ったかと思うと少し首を傾げ、大きな半目を更に細めて俺を見つめた。
「え、もしかしてコレ聞こえとる？」「うん」
「ホンマに？？」「あー」
「嘘やない？？？」「うー」
「…１＋１は？」「田んぼの田」
ほんまうるさいな、黙れ言うてんねん。
そんな思いを込めた俺の眼差しには気付かず、勝手に盛り上がるカメ。
「えーマジか…僕スキン無しで人間と喋んのひっさしぶりやわぁ」
カメはうんうんと感慨深そうに頷き、遠い目をしだした。
前にも人間と喋ったことがあるのだろうか。
そういう趣旨の質問をしてみると、どうやらそういうわけではないらしい。
「いや、ガチの人間と喋ったのは君が初めてなんやけど。大昔に人間と異種族のハーフがおってな、そいつも僕みたいなのとスキン無しで喋れてん」
今はもうおれへんのやけど、と付け加えられる。異種族同士のハーフはよくある話やけど、人間とのは初耳やな。
それについて聞こうとしたところで、とうとう俺の体が明確な不調を訴えてきた。
カメをリビングのテーブルの上に置き、その場にへたりと座り込む。
流石にこの体で雨の中過ごすのは無理があったのか、頭の熱さと全身の寒気で俺の体がカオスなことになってる。
「あれっ、なんで急に消え……大丈夫か！？」
上からカメがこちらを覗き込んできた。心配させないように、返事だけはしようと口を開く。
「……だいじょ、」
とだけ喋ったところで喉の痛みに邪魔をされ、盛大にむせた。やばい、踏んだり蹴ったりや。
「ど、どうしよっ誰か「大丈夫っすかゾムさん！！」え、ゾム？？」
咳で起こしてしまったのか、上の階からショッピくんが猛スピードで降りてくる音が聞こえてきた。
…カメのことはなんて言おう。ショッピくん驚くやろな。
彼がリビングに入ってきた次の瞬間、俺達は別の形で驚くことになる。
「下おるなら先に俺を……は！？大先生！！？」
「ショッピくん！？！？久し、てかなんでここに……え、どゆこと？？？」
ショッピくんに大先生と呼ばれたカメも、ショッピくんのことを知っているようで。
激しく咳き込む俺の横で、嬉しそうにはしゃぐ他種族達。
頼むから、静かにしてくれ。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
