25.ター○ルトーク ページ32
次に目を覚ました時には、外はもう真っ暗だった。
未だに雨が降り続いているのか、パラパラと水の跳ねる音が聞こえてくる。
「けほっ……水」
ずっと寝ていたせいか、喉がカラカラや。
お使いを頼もうと周りを見回すと、すぐそばに彼はいた。
椅子から6本の尾をだらりと下げ、すやすやと眠るショッピくん。色々世話になったし、起こす気にはなれない。
「(自分で飲みに行くか)」
ベッドから上半身をゆっくりと起き上がらせ、そっと床に足を付ける。
倒れてから半日経った今でも、変わらず体はしんどい。
目的地はキッチン…長い旅になりそうだ。
俺は慎重に立ち上がり、フラフラと部屋を出た。
両手で壁を伝い歩き、ようやくキッチンへ辿り着く。
十数秒かけて蛇口を捻り、やっとの思いで口に入れた水は格別だった。
「……俺、今度は帰らんと駄目なんか」
喉は潤ったものの、依然として体力は糞雑魚なめくじ以下のまま。
さっきまでは階段を降りる作業だったから良かったものの、登りの大変さなど目に見えている。
少し休憩しようとリビングのソファへ足を一歩踏み出した、その時。
「いや〜参ったな、ホンマにどこやここ」
「……ん？」
家のすぐ外から聞こえる、男性の声。
驚いたことに、人間のものではない。動物…いや、こんなに流暢なのはもしかすると……
「(他種族…？)」
俺の疑念をよそに、声の主はどんどん近付いてくる。
「おーい誰か哀れな僕を助けてぇ、海に帰りたいだけなんですぅ……」
なるほど…初めて聞く言語やし、海に住んでるんかな。
とにかく海への行き方なら少し遠いが分かる。ここは助けるべきや。
彼が通り過ぎてしまう前に、俺はできるだけ速やかに玄関へ向かった。
玄関のドアを開け、裸足のまま道路へ出る。
雨のせいで視界が悪いが、彼は音と光でこちらに気付いたようだ。
「……なんや野郎やないか…いやこの際どうでもええ、おーい少年！こっちや！」
ショッピくんといいコイツといい、なんで他種族ってこんな残念な奴ばっかなんやろ。
声を頼りに辺りを探していると、すぐ後ろでペタペタと地面を這う音が聞こえてくる。
地面を見下ろせば、そこに彼はいた。
「(……カメや)」
「いやー奇跡やなホンマに。ところでいきなり出てきて何探してたん、君」
唖然とする俺の足元でペラペラと喋り続けるこの生き物。
ずっと成人男性のものと思わしき声を発していたのは、まさかの子ガメだった。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
