幕間3〜妖怪と人間〜 ページ27
「こ、こんちは……猫や」
一軒目は、隣の家に住む男児。少しは顔見知りらしい。
フードで顔が見えにくい。第一印象は暗めだった。
彼は去年からここに越してきたばかりで、小学6年生にしてもう一人暮らしをしているらしい。家庭の事情やろうか。
「おばさんちのやないん？その子」
「…うちの子とは違う子よ。ほら、目が違うでしょ？野良だったのを拾ってきちゃって。どう？一緒に暮らしてみない？」
婦人の足から顔を出し、少年の顔を下から覗き込む。
────心なしか、その顔に見覚えがあったような気がした。
「んーー……」
少年は少し黙った後、顔を上げてはにかんだ。
「ええよ！俺動物好きやねん」
彼が女ならもう少し良かったのだが…まぁいい、普通の猫のふりをして、暫くはここに置いてもらおう。
こうして、里親探しは一軒目にして終わりを迎えたのだった。
スキンには、自分のアバター情報の他に身分証やパスポートなどのデータも内蔵されている。外国へ赴く際、異種族は必ずそれを身に付けてないといけない。
それがない今、俺が身分を証明する為の証拠も、帰るすべもないわけで。
ただ、彼は今小6…3年待てば中3になる。
今年は流石に国内だろうが、今時の中学校は修学旅行先を海外にすることも珍しくない。
我々国は観光名所として人間にも人気や。毎年修学旅行客が訪れている。もし彼の学校が行き先を我々国にしたのなら、あわよくば紛れ込んでそのまま帰国できるかもしれない。
「よろしくな、猫」
少し生意気だが、今は居候の身。文句を言う筋合いはない。
たった3年、耐えるだけや。
────────
────
「猫、好物なに？」
「猫、水苦手やないん？」
「大人しいな〜猫。ホンマに野良やったんかお前？」
猫、猫、猫。
いちいち呼び方が癪に障るが、彼との生活は意外にもあまり苦労していない。
この少年、俺が態度や口に出した要望を必ず実行してくれるのだ。
まるで俺の言葉が聞こえているみたいで、何だか少し恐ろしい。
ある時、俺は思い切って彼に明確に喋りかけてみることにした。
「お前頭ええんやな。そこら辺の猫とかよりよっぽど凄いで」
「……ありがとうございます。ところでお名前は？」
「受け答えも流暢やなぁ…俺、颯真希。呼び方は何でもええよ」
────ホンマに聞こえとった。
全身の毛が逆立ち、思わずその場で飛び上がる。
この男、一体何者なのだろうか。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
