幕間2〜汝は戦犯なりや？〜 ページ26
公衆の面前で突然人間が消失したことにより、一時その場は騒然となる。
「まぁお兄さん！？ど、どうしましょ…」
「ちょっと通してくれご婦人」
周囲のざわつき様に流石に違和感を感じたのか、俺の先輩────コネシマさんがようやく動いた。
顔立ち｢だけ｣は整っている彼を無視する者はそういない。先輩の指示により、周囲は俺達を中心とした円を作って脱出不可の陣形をとった。
「よーしよしええ子や……おら捕まえたっ！！」
コネシマさんはしゃがみこみ、まず無抵抗の俺をガシリと両手で掴む。
そしてそのまま……暴れ猫の飼い主である女性へと手渡した。
「にゃあああああああ！！？(コネシマさん逆です全然ちゃいますよ！？)」
「どうもありがとうございました、なんとお礼を言えば……！」
「ええねんええねん俺ら急いどるし……さてと、ショッピくーん？」
勘違いに気付かぬまま、彼はもう一方の暴れ猫を拾い上げる。
「一体どないしたんいつになく大暴れして…もしかしてピンバッジ壊れて不機嫌なん？なんやかわええとこあるやんけお前ぇ！」
群衆から送られる拍手の中、偽の俺を小脇に抱えて出発ロビーへと消えていく先輩の後ろ姿。
「ふしゃあああっ！みゃうぅぅうぅ！！(嫌やあああっ！助けてコネシマさん！！)」
渾身のSOSは届く筈もなく、俺は出会って間もない婦人に連れられ空港を出たのだった。
────────
────
婦人の自宅に着き、窮屈なキャリーケースから開放される。
そこで彼女は初めて自身の飼い猫と俺との間にある、唯一であり明確な違いに気が付いた。
「あら？目の色が……あなたもしかして、空港のお兄さん？」
あの猫の瞳の色は青、俺は紫。ちょっと見れば分かるやろホンマなんで間違えてんあのクソ先輩は。
婦人は少し困惑した様子であったものの、なんと異種族である俺を数日間家に置いてくれた。
しかし……
「ごめんなさいね…やっぱりあなたを見てると、ノワールちゃんが忘れられないの……」
ノワールちゃん…とは多分あの暴れ猫のことだろう。あの出会いが最初で最後の俺からすればあんな奴顔も見たくないが、婦人にとってはそれなりに一緒に過ごして来た可愛い家族や。
「にゃーん、うにゃあ(ありがとうございました。十分お世話になったで)」
これ以上俺の顔を見ることで悲しませないよう、翌日には2人で近所を巡って里親探しに出ることにした。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
