19.や り ま せ ん ページ21
「兎月くんが昨日ここに来て教えてくれたんだよ。バレたって言ってたから焦ったけど、希くんなら安心やね」
水色の髪を揺らし、微笑む神木先生。
ちなみに俺が異種族と話せることは先生も知らんし、バラすつもりもない。
「さ、良くなったならはよ教室戻り。もうすぐ1時間目始まるで」
その言葉に従い、まず兎月が部屋を出る。
俺も出ようと足を一歩踏み出したところで、後ろから呼び止められた。
「希くんは……ちょっと残ってな」
振り向くと、先生が満面の笑みでこちらを見ていた。
冷ややかでもなく、マジ〇チスマイルでもない、至って普通の笑顔。
この人はかなり美丈夫やし、笑った顔なんて言うまでもなく綺麗や。
しかし今のような状況において先生の笑顔は、この上なく気味の悪い合図へと一変する。
「先生、俺、授業────」
「ええのええの、先生が言うといたるから」
……すまん、兎月。幸運を祈っていてくれ。
そんな思いが通じるはずもなく、兎月はイマイチ理解できないという表情でその場を去っていった。
「さて、希くん」
「………ハイ」
「そんなええ香り引っ提げといて俺から逃げられるとでも？」
前にも言ったが先生は背も高くて、優しくて、顔もいい。
だが唯一、たった一つだけ、俺が苦手な部分がある。
それはというと……
「じゃ、ベッド行こうか」
「先生さようなら！！！」
────先生が男好きで、特に俺を気に入ってるところや。
というわけで俺は逃げる！！
持ち前の俊敏さと体幹バランスをフル活用し、俺は扉の前でカバディポーズをする先生の前をするりとすり抜けて爆速で保健室を出た。
────────
────
「はァ……もう二度とあんなとこ行かへん」
「な、なんかあった……？」
朝からずっと動き続けてもうヘトヘトや…今日は一日中爆睡間違いなしやな。
汗ばんだ頭を乾かす為、俺はフードを取って長い前髪をくしゃくしゃとかき上げた。
「「「キャーー♡」」」
「……は？まだ俺匂いしとる？？」
「......いや。多分これは元々なんじゃないかな」
「はぁ？？もう最悪や……」
次の授業の教科書やら何やらでバリケードを作り、女子軍団からの熱い視線を遮る。
もうこりごりと嘆く俺の傍で、兎月はおかしそうにくつくつと笑っていた。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
