17.くっさぁ ページ19
「う、兎月！！この状況どうにかならへん！？」
「なるわけっあるかーー！！」
ぎゅうぎゅうになりながらも少しずつ、確実にこちらへと近付いてくる兎月。
彼が伸ばした手をやっとのことで握り返し、ようやく合流を果たす。
ほんのりと温かい感覚が手の平に染み渡ったおかげで、遠のいていた意識がスッと戻ってきた。
「ていうか凄い匂いだなお前、それ何の香水？」
「だから何の話やねん……！」
「…とにかく校舎入るか」
さっきの女子軍団といいコイツといい、”匂い”って何や。
新たに生まれた疑問を胸に、俺は兎月に手を引かれるまま自分の教室へ直行した。
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「はいコレ、昨日のパーカー」
渡された紙袋の口を引きちぎる勢いでこじ開けてパーカーを引っ張り出し、すぐさま羽織る。
予想はしていたが、匂いの元は俺っぽい。これで緩和されたか聞くと、どうやら少しは良くなったらしい。
未だに教室の外には多くの生徒がこちらを覗いている。頼むから、お前らも匂いもはよ消えてくれ……
「つうかそれって臭いん？」
「いや、すんっっごい良い匂い。ウサギの俺からしたらちょっとキツイけどね……」
最後の一言は誰にも聞こえない程の小声だった。そっか、ウサギって鼻利くんやっけ。
「……すまん暫く寝るわ、ちょっともうしんどい」
さっきまでのことも含めとにかく疲労が溜まっていたので、俺は暫し仮眠を取ることにした。
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────
「ん……」
自発的に目が覚め、机からむくりと顔を起こす。
時計の長針は20分しか動いていなかったが、それでもかなり楽になった気がした。
「あ、おはよう。気分どう？」
「めっちゃマシになったわ…匂いは？」
「めっちゃマシになったよ。多分、さっきはそれのせいで皆が変だったんだと思う」
兎月に言われ、周りを見回す。さっきまでの光景が嘘のように廊下は閑散としていた。
「颯真から匂いが消え始めた途端に皆我に返ったみたいに帰ってっちゃった。本当何なんだろうな」
「さあ、どうでもええわ。……確かにちょっと臭うな」
今になって、服の隙間から甘ったるい匂いが少し漏れ出ていることに気が付いた。全然良い匂いちゃうぞコレ。
溜まった匂いを外に逃がそうと、パーカーの前を全開にする。
「うッ……」「ん？」
その瞬間兎月が鼻を押さえて前のめりに倒れ、そのまま動かなくなってしまった。
────いやそれは流石に俺に失礼ちゃう？？？
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
