14.兎って鼻から音出すらしいで ページ16
「えーと、じゃあ……」
"こんちには" "いい天気ですね"
兎月は少し考える素振りをした後、喉の奥辺りからクゥクゥと音を発した。ウサギは声帯ないって言うけど、声帯がある獣人でも同じ発声方法なんやな。
意味も普通に聞き取れる。ちなみに今朝の天気予報によると1時間後は雷雨や。
「なんて言ってるか分かった？」
「ま、まさか。俺人間やぞ」
そりゃそうか、と笑う兎月。もし悪口やったら聞こえるとバラした上でぶん殴るとこやった。
ショッピくんも言ってたが、他種族と話せる人間は今のところテレビや新聞でも確認されてない。もどかしいけど、黙っといたほうが身の為やと思う。
暫くすると我が家が近くなってきたので、ここらで解散することにした。
「頭、庇ってくれてホントありがとう。
「予備のスキンは家にあるし、パーカーも明日には返すよ。じゃあまた明日」
「おん、じゃあな。見つかんなよ」
俺も他種族に関しては大抵の人間よりは理解があるし、誰にも言うつもりはない。シャトルランの時外にいたショッピくんもこのこと知らんやろうし、アイツにも黙っておこう。
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「おかえりなさ……あれ、上着どうしたんすか」
家のリビングに入ると、ソファで丸くなったショッピくんが訝しげな表情でこちらを向いていた。
いつも着てるモンやし、無いとやっぱ気になるよな……でもそう聞かれると思って、俺も事前に回答を用意しておいた。
「………人に貸してん」
ほら、嘘は言ってへんやろ？間のとり方も完璧や…多分。
疑り深い彼に深掘りされる前に、俺はそそくさとキッチンに引っ込んで冷蔵庫から缶ジュースを取り出した。
「あ、さてはあのウサギさんと何かありました？」
聞き捨てならない質問に、思わず蓋を開ける手が止まる。
いや、たしかアイツの苗字には兎が入ってた筈や。もしかするとあだ名なんてことも有り得る。
これ以上ボロを出さない為にも、俺は無視を決め込んだ。
「名前何やったっけな、ウサギの獣人の」
口に含んだばかりのジュースを勢い良く吹き出す。
いやなんでお前が知ってんねん。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
