13.正体 ページ15
兎月に被せていたフードを捲り、ゆっくりと覗く。
さっき目にした光景が見間違いじゃなかったことを確認し、そして俺は────
フードを元に戻した。
「………へ？」
「まぁ、それは置いとくとして……」
何が起こったのかと困惑する兎月をよそに、俺は何食わぬ顔で記録用紙を手に取る。
俺のペアの記録は、35回……と。
「ほら、お前のペアも転んだで」
「え？……あ、あぁ」
さて、もう仕事は済んだけどまだ大半の生徒は走り続けてるし、暫くシャトルランは続くだろう。
テストを終えたそれぞれの相方に結果を書いた紙を渡した後、俺は再び兎月に向き直った。
「とりあえず、”ソレ”引っ込める方法ないん？」
────────
────
体力テストも無事(？)に終わり、時は放課後。
ちゃっかり今日もついて来ていたショッピくんと別れ、俺は初めて兎月と2人で下校していた。
あの質問の後俺はある”モノ”を探せとコイツに言われ、体育館中をくまなく探し回った。
で、見つけたのは……兎月がいつも付けてるイヤリング。走ってる間に誰かに踏みつけられたのか、粉々になっとったけど…
現在は全ての破片を回収し、兎月の手元に収まっている。
「で、兎月。率直に聞くけどお前、獣人族やろ」
「！……うん」
正解やった。まぁ、別に合ってたからといって何かしたいわけでもないけど。
実際、俺があの時見たのは人間にあるはずのない長い耳。獣人族は人間の体にケモ耳や尻尾やらが生えてんのが特徴やからな。
「じゃあそういうのを引っ込めるのに使っとったんがあのイヤリングなん？」
「やっぱ付けてたのバレてたかぁ…そう。アレ”スキン”って言って、異種族が人間に変身する時に使うアイテムなんだ」
今手元にあるのは壊れて使えへんけど、身に付けた異種族はあらかじめ自分の設定しておいた人型アバターに変身することができるらしい。それで兎月は人に化けてたんか。
形はイヤリングに限らず様々で、スキンの一番の特徴は人語を喋れない、声を出さない、姿が見えない種族でも人語を喋れるようになることなんやとか。
「へぇ…じゃあ兎月も元は違う言語喋っとったん？」
「うん、まぁ俺の種族はほとんどが人語喋れるからそんなに苦労してないけど」
「じゃあ喋ってみてやそれ」「へ？」
兎月はこのこと知らんけど、一応俺は異種族の言葉が分かる。
コイツには悪いが、ちょっとだけ無茶振りしてみることにした。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
