11.小説だと人気なのに現実だと不人気な種目ってなーんだ ページ13
「颯真の1つ前の子が転んでそっちのクラス一瞬ドベになった時あったでしょ？」
「俺んとこそんとき1位で、颯真がバトン貰った時点でほぼ半周分くらい差があったんだよね」
でも確か、そのリレー俺のクラスが1着やったよな。ってことはつまり…
「俺がゴール寸前に追い抜いた奴、兎月やったんや」
「そ。正直すんごいショックだったけど、それよりもめっちゃかっけぇなーって思って。多分俺が女だったら確実に惚れてた」
正面から堂々とそんなこと言われちゃあ、何だかこっちもむず痒くなってくる。
相手が男やから微塵も嬉しくないけど、とりあえず褒め言葉として受け取っておこう。
「だから俺、今回も負けちゃったけど後悔はしてないんだ。じゃあ明日のシャトルラン頑張ろうな！」
満面の笑みで喋りかけてくる兎月に、俺も負けじとはにかんだ。
「次も俺が勝つで」
────────
────
翌日、体育にて。
いよいよシャトルラン本番、俺達は隣合って位置に着いている。
兎月は俺と一緒に走る為あらかじめ別の奴とペアを組んできたらしい。
俺はというと自分から人に話しかけるのが死ぬほど恥ずかしくて暫く立ち往生してたけど、知らん女子が話しかけに来てくれたからそいつと組んだ。
スタート、と無慈悲な声が体育館中に響き渡る。
この声とリズム、どうも苦手や。急かされてる気がしてならない。
「なんかめっちゃ余裕そうだね」
隣を走る兎月が話しかけてくる。そりゃまだ3往復目やし疲れる奴おらんやろ。
「はぁ…もぅ…」「マジでやだ…」「ひぐっ…ぐすっ……」
……体力というか、精神面でもうキツそうな奴らがおる。
やがて40往復もしないうちに最初の脱落者が現れ、そこからの減りは速かった。
「はぁ…はぁ……もう女子、ほぼいない、じゃん…」
「…兎月？」
「はぁっ、言ってなかったっけ…俺…持久力ないの……」
「おまっ……70も走らずバテる奴がどこにおんねん！？」
「そっちこそちょっとは疲れろ！」
確かに今までの種目やと長距離系はなかったかも。
なんか兎月ってちょっと臆病で、野菜好きで、短距離得意で、でも体力無くて……
それってまるで────
「え、どしたどした」「誰か転んだくね？」
クラスメイト達のざわめきに違和感を感じ、走りながら辺りを見回す。
「……！？どこ行ったアイツ」
隣に兎月がおらん。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
