10.ふーん甘いぜ ページ12
「颯真、一緒に回んない？」
「ん、ええよ」
人気のないところでショッピくんを下ろし、そそくさと人混みに入る。
テストの説明を受けて解散になったところで、兎月が食い気味に話しかけてきた。
後日一斉にやるシャトルラン以外は、自分達で会場を回らなければならないらしい。
他に誰もおらんし、丁度ええか。
というわけで、2人で各種目を捌いていくことになった。
まずは負担の少ない握力から。
「ふんんんん……っっぶはぁ！！あ、新記録！」
「おお、いくつなん」
「右48で左47だった！颯真もやってみ」
はい、と測定器が手渡される。
俺はインドア派やけど、体動かすのも気持ちええよな。
リセットボタンを押し、徐々に手に力を込めた。
「ふっ………」
パキ
………なーんてね。今のは練習や、さあ気を取り直して…
「ん？今の音どっから……あれ颯真？どこ行くのー」
「し、しっくりこんかったから変えてきた」
「ずるくない！？」
ひび割れたやつをかごの奥深くに突っ込み、新品のを持ち出してきた。
…何も見なかった。いいな。
今度は数値をガン見しながら握ってみた。
「はい。右57に左61と…10点やな。ということでね次行きましょ〜」
「え、嘘…うわ本当じゃん！？」
────────
────
こんな調子で次々と会場を巡り、俺達は全ての種目をやり終えた。
「いや全部負けたんだけど！！！」
一息ついてお茶を飲む俺の横で、地面にどかりと倒れ込んで叫ぶ兎月。
兎月のすぐ後ろで昼寝していたショッピくんが驚いて飛び跳ねたのを目の当たりにしたせいでお茶を吹いた。そんなに怒らんといてや、お互い様やん。
「立ち幅跳びと反復横跳び超自信あったのに…」
「足使う系得意なん？」
「そう！いやー流石にこうもフルボッコだと傷つくわー」
足……そういえば、今言った2つよりも悔しがってたのは50m走やったっけ。
何か思うところがあったのかと聞いてみることにした。
「あぁ…実はあれリベンジも兼ねてたんだよね。まあ颯真は覚えてないだろうけど」
「？？？……おん、覚えてへん」
「颯真って去年の体育祭の全員リレー、アンカーだったでしょ？」
「え何で知っとんの」
「いやー実はそんとき俺もアンカーだったんだよね」
どうやら俺達は知り合う前からライバル同士だったみたいだ。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
