9.たのしい授業 ページ11
新学期が始まって一週間が経った。
とっくに授業はスタートし、俺のノートは早くも干からびたミミズだらけや。
それと、俺はカラオケでの会話を機に兎月と毎日話すようになった。
実を言うとまだ友達はアイツ一人やけど、俺は「浅く広く」よりも「狭く深く」の方がいいと思う。
……言い訳ちゃうからな。
「ホラ、教科書出して。肘つかんといてください」
フードの中には子猫のショッピくん。普段はそんなついて来ない癖に、「今日は体力テストの日や」と呟いた途端乗り気になったのだ。
6時間目が体育で、今は5時間目の社会。あともうちょっとの辛抱や。
「今日は先週に引き続き、異種族と人間との歴史について学んでいきます」
「へぇ…ちょっと興味あるかもっすわ」
異種族のショッピくんからすれば、この授業には興味があるらしい。
丁度ええから暗記して後で教えてもらおうかな。
「よし。じゃショッピくん、頑張ってな」
「あんた他種族と喋れる身としてこの単元くらいはちゃんと勉強してくださいよ。今日他の教科ほぼ寝てたでしょ」
「体力温存中やから……てかさっきから声いつもとちゃうくない？」
「あぁ、これ植物言語っす」
「なんで？？」「まぁまぁ」
まぁまぁってなんやねん。
そんなやり取りをしている内に、いつの間にか黒板に板書が出来上がっていた。
「ほら、ゾムさんはよ書いて！」
「ショッピくんうるさい！」
「颯真、どうかした…？」
「な、なんもないなんもない！」
────────
────
ちゃんと白状するわ。
爆睡しました。
「一応ちゃんと起こしましたからね。はい板書」
「ふわあ……ありがと…ほんますんません」
俺が寝ている間にもきちんとノートを取ってくれていたらしい。念力で書いたとは思えない丁寧な文字列がそこにあった。
「…あれ、怒んないん？」
「……別に。聞いたところで意味ないですあの授業は」
曰く、この教科書に書かれた歴史は大体間違ってるとか。ちょっと待てなんで分かんねん。
「……まぁ、怒られへんならなんだってええか」
「その代わり、俺が今から本当のことを教えます。時は数世紀前、人間と他種族との間に……」
「待て待て待て次体育やから！」
ショッピくんの話を無理やり遮り、体操服袋を引っ掴んで俺達は弾丸のような速さで教室を飛び出した。
…と同時に彼が集合場所のグラウンドの倉庫裏まで瞬間移動してくれたので、授業には普通に間に合った。
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作者名：カキ | 作成日時：2022年8月3日 2時
