side story _ sya 4 ページ40
「……待って、話を、」
俺は、せめてゾムの手紙を渡そうと手を振りほどこうとする彼女を止めようとした。
「うるさい。出ていかないなら私が出ていく。追いかけてこないで。」
だが、Aは俺の話を遮って手を振りほどき、俺を壁に押し、彼女はどこかへ走った。
追いかける気力もなく、その場で座り込む。
自分のしでかした大きな間違いがこの結果になっている。
1番大切なゾムの手紙を渡せてなかった。あれを渡さないと彼女は不幸な結末しか待っていないのは明白だった。
「…最低だ。」
思わず自分の悪口をこぼす。
「ほんと、最低だよな。」
後ろからそう声が聞こえた。今、1番会ったらいけない人の声。
「…グルッペン!?」
俺は慌てて後ろを向くと目の前に彼がいた。俺の胸にナイフを刺している、彼が。
「…な!?」
俺がそう理解した瞬間、言葉にすることも出来ない痛みが俺を襲う。その痛みに耐えきれなくなり、その場に倒れる。
「なんでいるんだよ…!」
俺は彼を思い切り睨んだ。
「そりゃ、お前の目の前にある家から物騒な言葉が聞こえたからな。」
そう言いグルッペンはくるりと反対方向を向き、Aの家のポストの裏に手を伸ばして、盗聴器たるものを取り出した。
「お前……!!!」
「そりゃ、俺のAを取ろうとするなんて。しかも怒らせたのだから殺すしかないじゃないか。」
嘘だろ。俺は思わず耳を疑った。
でも、グルッペンの目は冗談を言ってるような目ではなくて。
「……お前の方こそ、嫌われるぞ。」
俺はせめてもの抵抗にニヤリと笑い彼を煽る。
「俺が愛せばAもいつかは愛してくれるからいいさ。」
それでもあいつは怒るどころかニヤリと笑い返す。
狂っている。
彼が逃げろと言った理由がよく分かった。
もっと早く、安全なところで渡しておけばよかった。
だが、今手紙を渡していたらそれも聞かれていた。そしたらAが逃げるのも早くにバレて、逃げられなかったのかもしれない。
あのタイミングで渡さなくてよかった。ただそれだけでいい。俺は彼女の役に立てたんだ。
そしてどんどん薄れていく意識に死ぬんだな、と感じる。
俺はゾムには叶わなかったよ。
そして、約束、守れなくてごめんな。
叶わなかった筈なのに、最後に脳裏をよぎったのはAの笑顔だった。
あぁ。
俺はやっぱりAが好きなんだな。
end.
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凛桜ぽん(プロフ) - まつさん» ありがとうございます!まつさんの作品密かに拝見してて正直めちゃめちゃ喜んでます…!!(手が震えてる)よいエンドになる(はず)なので頑張ります!! (2018年7月17日 21時) (レス) id: 8b759a8a6d (このIDを非表示/違反報告)
まつ(プロフ) - めちゃくちゃ続き気になります…!!なんとか皆良い結末を迎えられることを願ってます!!更新頑張ってください!!! (2018年7月17日 21時) (レス) id: cd163d6252 (このIDを非表示/違反報告)
凛桜ぽん(プロフ) - あやト。さん» ありがとうございますううう!!ゾムニキ全然出せなくてちょっと放置プレイになってますけどこれから登場させていく(つもり)なのでどうかかっこいいゾムニキがでるまでお待ち下さい... (2018年7月3日 17時) (レス) id: cfdc257248 (このIDを非表示/違反報告)
あやト。 - ゾムニキぃぃ(´;ω;`)ブワッ 夢主ちゃんがカッコイイ...これからも頑張ってくださいな!! (2018年7月3日 17時) (レス) id: a3edd0f6e7 (このIDを非表示/違反報告)
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