21話 ページ25
「私、ヘアメで三浦君担当した事あるんだけどさ。男性多い現場だったってのもあるかもだけど、年相応ってイメージあったな。騒ぐ時は騒ぐ！みたいな今時の子というか」
「あー、刀剣の時もわりとそうだったかなぁ」
「あれは可愛い顔して中々やんちゃと見た」
「麻ちゃん評論家みたい」
麻子こと麻ちゃんは、専門学校を出てヘアメイク関係の会社務めをしている。
仕事の関係で知り合ってさっぱりした性格の彼女とは、すぐに仲良くなった。仕事仲間というよりゲーム仲間で、ゲーマーの彼女によく通話を繋いで新しいゲームを教えて貰ったりしている。
「でもそーんなやんちゃ君が、Aには年上な顔を見せるのかぁ。やだぁ〜、ギャップ〜！」
「もー、麻ちゃんにしか相談出来ないんだから真面目に話聞いてよ…」
こんな事中々言えるものじゃない。そう言うと、麻ちゃんは笑った。
「だって、Aの中であげないって選択肢無いじゃん。Aの中では答えが決まってるんだよ。今は私に話して気持ちの整理がしたいだけ。違う？」
「あげない選択肢が無いって、そりゃあ…お礼しないとだしさ」
「本当にお礼？」
「え」
「いいんだよ。別にお礼じゃなくたって、Aの気持ちでも」
麻ちゃんの言葉に私はどきりとする。彼女は「お、ガチャ回せるだけ石貯まってるな」なんて全然関係ない事を言いつつ、話をしてくれる。
「まぁ色んな考えの人いるだろうけど、"それ"も含めて応援されるだけの人間になりな。たくさん色んな事経験して失敗してさ。"それ"もその一つなんじゃないって私は思うけど」
「……」
「A。自分が「商品」だから「芸能人」だからって、気付かないふりしなくてもいいんだよ」
麻ちゃんは「それ」と称したものが、どういう感情であるかを明言しなかった。気付かないふり、と言われて心当たりがある感情が、思い出が、私にはもういくつもある。その理由はいつも、たった一人だ。
「で！？何作るの！？」
「今凄いじーんとしてたのに雰囲気台無しだよ……！」
「フォンダンショコラ食べたい私」
「それは麻ちゃんが食べたいだけでしょー」
「あ、でもさ。中には家の人以外の手作り食べれない人とかもいるよね」
「えっ！？」
しまったそういう場合もあるのか――と、先に聞いておけば良かったと後悔した。
「ど、どうしよう麻ちゃん…！」
「超楽しみ〜！ね、どうなったか聞かせてね！！」
「他人事だと思ってー！！」
バレンタインはもうすぐ其処まで迫っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
emer(プロフ) - シンドロームさん» 初めまして。滅多に感想頂く事がないので嬉しくて時間を空けて何度も読み返してしまいました。ありがとうございます！恋愛色薄めになっちゃうんですが仕事面丁寧に書こうと思っていたので嬉しいです…！また是非見て頂けたら幸いです！ (2020年8月1日 13時) (
レス) id: 29d25624ca (このIDを非表示/違反報告)
シンドローム(プロフ) - 読み応えがあって、つい没頭して読んでしまいました。貴方の書く小説をもっと読みたいです。なんでもっと早く貴方を知れなかったんだという気持ちです。長々と連投してしまい申し訳ありませんでした。ともかく、貴方の書く小説が大好きです！これからも頑張って下さい (2020年7月31日 0時) (レス) id: 85f305799d (このIDを非表示/違反報告)
シンドローム(プロフ) - 凄く、凄く面白いです！ 稽古場、本番、ラジオ、細部に渡って描写が細かくて、尚且つとても読みやすく、何より面白いです！こんなに素敵な小説に出会えて感無量です。文章の奥底から役者さんへの愛を深く感じます。言葉運びの一つ一つが綺麗で（続きます (2020年7月31日 0時) (レス) id: 85f305799d (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 無理せず頑張って下さい！ (2019年10月27日 0時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
emer(プロフ) - 晴菜さん» コメントありがとうございます！初めてなので拙いと思いますが頑張ります(^O^) (2019年10月26日 19時) (レス) id: cd93ae58f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：emer | 作成日時：2019年10月19日 2時
