トリプルフェイスを持つ少女。実は･･･【名探偵コナン】 (ページ8)

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八輪ページ8

朝ごはんを食べ終え、食器を片付けていると、ぬっと横から手が伸びてきた。

「私も手伝いますよ」

『いえ、結構です。沖矢さんは車で待機していてください』

「いえいえ、さすがに朝食をいただくだけというのは……」

『……はぁ』

察せ。察して。頼むから。
なんで降谷さんといい、沖矢さんといい、深く入り込んでこようとするのだろうか。
これ以上、疲れたくないし。それに、彼を忘れたくない……というのに。

私の傷は思った以上に深くて、痛くて。
この傷はなかなか癒えない。
誰もこの傷を癒せないし、彼以外に癒してほしいとも思えない。
……だから、頼むから。これ以上、深く踏み込んでくるな。

そんな思いを胸に秘め、沖矢さんをまっすぐに見つめる。
すると、彼はしぶしぶわかりました、と手を引いてくれた。

沖矢さんが玄関から出て行ったのを確認するなり、その場にしゃがみこみ、スマホを開く。
唯一、彼と一緒に撮った写真を眺める。付き合って何年目かのデートの時の写真。……私がどうしてもって駄々をこねて、しぶしぶ彼が了承してくれた形見のうちのひとつ。

画面越しの彼をひと撫でし、スマホを胸に引き寄せる。そうすれば、もう亡き彼の声が聞こえてくる気がするから。

聞こえる言葉は、いつも謝罪の言葉ばかりで、私的には心が痛い。...けれども、彼のことだからきっと、謝っても謝っても、謝り足りないんだろうなぁ。……なんて、勝手に思い描いて、いつまでもそのカッコいい後ろ姿に縋って、泣いて、悲しんで。いつか、慰めてくれると信じて。……いつか、私の所にけろっとして帰ってきてくれるんじゃないかって、ずっとずっと思い続けて。

……はて、何分経ってしまったであろうか。
すでに暗くなったスマホに光を灯せば、沖矢さんが去ってから１０分ほど経っていた。―――つまり、外に沖矢さんを１０分も待たせていることになる。

慌てて鞄を取りに部屋へと走り、家の鍵を持って玄関から飛び出せば、ごつんと痛々しい音と共に、おでこをさすった沖矢さんが目の前へと現れた。

『うっわあああ！！ご、ごめんなさい！！！痛かったですよね。湿布取ってきますからちょっと待ってて―』

ください、と言いかけた口は沖矢さんの行動によって中断させられた。

『……沖矢さん、離してください』

「……」

『急がないと大学、遅れちゃいますから』

彼の目を見ず、振り返りもせず言葉だけを発する。
それでも彼は私の手首から手を離すことはなかった。